陽介は無言で諒を見返す。その顔を見て、言った当人の方が驚く。

「なんだよ、マジで落とされちゃったのかよ」

「落とされたんじゃない。勝手に俺が落ちたんだ」

 しかめっつらして呟いた陽介だが、おそらくそれは照れ隠しの表情だ。諒はため息をつく。


「かわいいもんな。藍ちゃん」

「別に、顔に惚れたわけじゃない」

「ほう? なら、どこに惚れたんだ?」

 身を乗り出してきた諒を避けて、陽介は立ち上がる。

「いいだろどこだって。ほら、俺たちも帰るぞ」

「へーい。遅くまで待たせちゃって悪かったな」

 二人で教室をでて、無言で昇降口へと向かう。靴を履き替えながら、陽介が小さく言った。


「好きだって言った。そしたら、それから避けられてる」

「えっ?!」

 予想外の答えに、諒は手にした靴を落としかけた。

「なんだよ、いつの間にそんなところまで話が進んでたんだ?」