あれから数日がたって、陽介は誰もいない放課後の教室で諒を待っていた。

 がらりと教室の扉をあけた諒は、一番前の席でぼおっと座っている陽介に持っていた缶コーヒーを投げる。


「陽介、ほら」

「うおっと。……あちっ」

 タイミングを外した陽介は、その缶を落としてしまう。

「どんくさい」

「ぼーっとしてただけだよ」

 落ちた缶をひろって軽く拭くと、陽介はそれを開けながら聞いた。


「先生、いたか?」

「ああ。これで明日からの修学旅行、心から楽しめる!」

「こんなぎりぎりまで課題の提出忘れてるやつなんて、修学旅行中止でいいのよ」

 諒と一緒に課題提出に行っていた皐月が言った。皐月はとっくに課題は提出済みだったが、一人で怒られに行くのが嫌だと諒がだだをこねたので、先週陽介に謝るのにつきそってもらった皐月がついていってくれたのだ。

「そんなあああ。皐月ちゃんのいけずううう」

 わざとらしくすがりついてくる諒を無視して、皐月は陽介をのぞきこむ。