「そんなの、聞いてない。それは私の役目じゃない。こんな気持ち、私が持ったらいけないんだよね?」

 うつむく藍の小さな頭を引き寄せ、その頭をぽんぽんと叩いた。

「お前が気にすることはない。可能性としてはありえなくはなかったんだ。俺たちが予想していたよりもはるかにお前が高性能だという証明でもある。よかったな」

 そういう木暮の表情は、言葉とはうらはらに厳しかった。


「でも、こんな風に自分がコントロールできなくなるなんて初めてで……怖い。私、どうなっちゃうの?」

「俺がなんとかする。お前は、何も心配しなくていい」

 そう言った兄に、藍は一瞬不安げな顔をむけて、ようやく微かな笑みを向けた。

「うん。お兄ちゃん、大好き」

 藍は、子供のように木暮に擦り寄る。藍から見えない木暮の顔には、厳しい表情が浮かんだままだった。



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