残された陽介の肩に、諒がぽんと手を置く。

「お前……いつのまに藍ちゃんと親密な関係に」

「ち、違う!」

 うろたえて首を振る陽介を諒がけたけたと笑う。


「わかってるって、からかっただけだ。藍ちゃんて、誰にでもああいう感じだから」

「諒、彼女のこと知ってるのか?」

「去年同じクラスだったから。あんな調子だから最初は女子の反感かってたけど、今じゃ男女関係なく人気者だよ。なんていうか……裏表なく、無邪気なんだよなあ」

「なるほど」

「元気いっぱいいつでもなんでも全力で楽しんでいる、って姿がかわいくってさ。それでいて、学年10位内には入る頭脳の持ち主なんだぜ? いい意味で、紙一重って感じかな」

 そう話す諒の顔は、色恋とは違う、どちらかといえば歳の離れた妹のことでも話すような穏やかな表情だった。諒に妹はいないが。


(じゃあ、夕べの藍は……?)

 陽介は首をひねったとき、チャイムが鳴った。

「いけね、三限はじまった!」

「いそげ!」

 二人はあわてて人気の消えた廊下を走り出した。


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