「ニコライズ……リザが授かった魔法のことだが……」


 これから多くの人たちに愛されていく姫の世話係なんて、放棄したところで何も問題は起こらない。

 姫の世話係反対派閥も、僕が辞任する事を狙って僕に酷い仕打ちを続けてきた。

 でも、僕は自分に授けられた任を全うしようと思ってしまった。


「きちんと魔法を育てていけば、それは将来のリザ様をお守りする力へと変わります」


 リザベッド様は王族で唯一、生まれたときから魔法を開花させることができた少女。


(彼女が将来、魔法で苦労したり嫌な想いを抱えて生きていかずに済むようにするのが僕の役割……)


 僕がされて嫌だったことを経験させずに済むように、僕がリザ様を守らなければいけないと思った。


「あなた、ニコのことを信じましょう」

「始めからニコのことは信頼している! ただ……私はリザのことが心配で心配で……」

「お任せください、国王様」


 けれど、僕はまだ幼かった。

 いくら魔法使いとして力ある存在だったとしても、経験の浅い少年という未熟さは悲劇を招いてしまった。


「僕だけを除け者にするなんて!」


 大切な大切な姫君に、呪いをかけるという重罪を犯した。


「姫に永遠の眠りを贈ろうじゃないか」


 僕を気に食わないと思っていた奴らの口車に乗せられて、今まで信じて積み上げてきたものを信じられなくなってしまった。

 裏切ってはいけない人たちがいたはずなのに、怒りと憎しみの感情は魔法を暴走させることに繋がった。