「はぁ……」

「魔法使いさん?」

「あー……なんでもない。なんでもないよ」


 彼女の穏やかな笑みと比べると、自分の笑みは可笑しなくらい歪んでいると思う。

 さっきからため息が止まらない。


「頼りないかもしれませんが、これからはなんでもお話してくださいね!」

「……ありがとう、リザ」

「ふふっ、頑張ります!」

 
 彼女と別れた数年の間に、彼女は随分とたくましく成長していた。


「私は、攻撃をするための魔法しか使うことができないところが悲しいですけどね……」


 攻撃するための魔法に長けていることが、どんなに凄いことなのか。

 それを理解していない彼女を励ましたいところだけど、目の前に用意された素晴らしく完璧な食事に涙を零しそうになる。


「この料理はリザが……」

「城の外では、自分のことはすべて自分で行うものだと教わったので」


 好きな子の手料理を食べられる日が来るなんて、誰が想像していただろうか。


「お口に合うか分かりませんが……」

「いただきます!」

「はい、お召し上がりください」


 手料理とは無縁な姫君が作った料理のはずなのに、味が完璧なところが末恐ろしい。


「……お味のほどは……」

「美味しい……」

「それは嬉しいです」


 大人になると味覚は変わるというけれど、多分その味覚が成長していない。

 幼い頃の僕の味覚情報を、事細かくリザに仕込んでくれた人がいたということだろう。


「魔法が失われたら……料理人を目指してみるのもいいかもしれませんね」

「確かに魔法が滅びる日が近づいているとは言われているけど、その日が来ることを心配する必要はないと思うな」


 魔法を育てることができている人たちは、今も世界に多く存在する。

 よって、魔法図書館はわざわざ僕に相続されなくてもよい場所。

 それでも、リザと再会を果たした魔法図書館の管理は僕に任されることになった。