「これから魔法使いさんには、お世話になってなってなって……」

「ちょっと言葉遣いが可笑しくなってるかなー……」

「とにかく私は教えを乞う身です」

「…………」

「なので、魔法使いさんは魔法使いさんということで、よろしくお願いいたします」


 魔法使いさんは深く大きく頷いて、了承の言葉を動作で伝えてくれる。


「古書探索のお手伝い……頑張ります!」


 出会って、まだたったの数分しか経過していない。

 交わした言葉の数だって、まだ少ない。

 それなのに、魔法使いさんが優しい人だろうなってことが分かる。伝わってくる。感じられる。

 それだけ、魔法使いさんも多くの愛情を受けて育ってきたということなのかもしれない。


(それとも……魔法図書館が、人に何か影響を与えてくれているのかな……)


 私には、どんなことができるのか。

 先代の魔法司書さんと同じだけのものを、この村に残すことはできないかもしれない。


「こほん」

「リザ?」

「……声の調子を整えているときに名前を呼ぶのは禁止です」

「すみません……」


 私には、何ができるのか。


「古書探索部門に勤務を希望している、リザベッド・クレマリーと申します」


 私だけができることを考えること自体が、おこがましいかもしれないけれど。

 それでも、私だけができることも探してみたい。


「これから、魔法使いさんの力を貸してください」


 こんな言葉しか言えない。


「よろしくお願いいたします」


 今はまだ、こんな社交辞令的な挨拶しかできない。

 それでも……それでも、いつかはきっと。


「……リザの力を借りたいのは、僕の方だよ」


 一国の姫ではなく、これからは古書探索部員としての、私の夢を語れるようになりたい。


「よろしく、リザ」


 魔法使いさんが優しい笑みを向けてくれる。

 魔法使いさんが笑ってくれているだけで、心の底から安心感のようなものが生まれてくる。


(恵まれすぎていますね……私は……)


 私の国外逃亡に協力してくれた人たちから、私は想像もつかないほどの大きな宝物を贈ってもらった。


「ありがとうございます」


 形には残らない、宝物。

 だけど、そんな宝物を受け取った私は優しい世界を知ることができた。

 それが恵みとなって、魔法使いさんという縁にまで繋がってくれた。