「あ……そっか、ごめん……許可も得ずに愛称で呼ぶとか……」

「もう1回、お願いします」

「え?」

「もう1回、呼んでください」


 和やかに流れていく時間を心地よく感じるのは、私を深い眠りから救出してくれた魔法使いさんの優しさのおかげだと実感できる。

 私の面倒を見てくれた魔法使い様は、女の子が外で眠ったらどういうことになるか分かっていますかって怒ってばかりだったから。


「…………リザ」

「はぁー」

「え、なんで溜め息……」

「感嘆の溜め息です」


 私が魔法使いさんに見せている笑みは、あまりにも子どもっぽくて笑われてしまうかもしれない。

 でも、この、嬉しいって感情を止めることができない。


「私、魔法使いさんの声が大好きみたいです」

「え、声?」

「はい、私、魔法使いさんに名前を呼んでもらえるのが、大好きみたいです!」


 ここで魔法使いさんが、ほっとしたような安堵の笑みを浮かべてくれた。

 私のことが心配で心配で仕方がないといった表情は消えてしまって、魔法使いさんも私と一緒に表情豊かな一面を見せてくれる。


「じゃあ、僕も自己紹介……」

「いえ、結構です」

「……ん?」


 魔法使いさんの存在は、私の体に力を注いでくれているような気がした。

 魔法使いさんの前でなら、もしかすると睡魔に打ち勝つことができるくらいの力を得ることができるようになるかもしれない。


「魔法使いさんは、魔法使いさんなので!」

「…………」

 
 私と魔法使いさんの間に流れる優しい時間を、これから大切にしていきたい。

 私がたくさんの人たちに愛されてきたように、この魔法図書館も愛で溢れる場所にしていきたいと強く思う。