「…………おやすみなさい……」

「リザベット様! こんなところで眠らないでください!」


 永遠の眠りに就くはずだった姫は、物心つく頃には目を覚ました。


「どうして姫に、僕の魔法が効かないんだ!」

「いやー……魔法の崩壊が始まっていると言いますか……」


 世界から魔法が失われ始めているのではない。

 僕が、神様から授けた魔法を枯らせてしまった。


「魔法使い様には大変申し上げにくいのですが、そのうち魔法と呼ばれている力は消滅してしまうんです」


 恐らく、それが原因で姫にかけた呪いは中途半端なかたちで残ってしまった。


「魔法使い様……おはよう……ございます……」

「うっ……おはよう……」


 永遠の眠りではなく、突然睡魔に襲われてしまうという体質を得た姫君。


「眠っても……眠っても……眠くて……申し訳ございません……」


 しばらくは、彼女の世話係を続けさせてもらえることになった。

 彼女に授けられた魔法を育てることができるのは僕だけだからと、国王様も女王様も罪を犯した僕のことを守ってくれた。


「……そのうち、嫌でも魔法は解けてしまうよ」

「魔法使い様の呪いは……なくなるんですか……?」

「…………ああ」


 そしてようやく僕は、僕を虐げた人たちがいたことを国王様と女王様に告げることができた。

 戻るはずのなかった愛情に再び包まれ、国を背負う人たちの深い愛情を身をもって知っていくことになる。