コンテストの結果は一次落選。
抱いていた淡い期待はあっけなく崩れ落ちた。
今日は私が落ちたコンテストで大賞を取った作品が書店に並ぶらしい。
小説サイトのお知らせに乗っていたから、家から少し離れた書店に電車を乗り継いで向かう。
私の夢は小説家になることだ。
小さいころから本が好きで、小学校で辛いことがあっても、中学校で陰口を言われても、本さえあればどうでもよかった。
本だけが救いで、居場所で。
私には本しかなかった。
小説を読んでいるうちに書きたくなって、原稿用紙に書き始めたのは小学6年生。
原稿用紙からパソコンに変えたんのは中学二年生。
今までいろいろなコンテストに応募してきた。
どれも結果は一緒で、一次選考で落選。
それでも私にはこれしかないからひたすら書き続けた。
才能がないことはもうとっくにわかっている。
書店に行って、コンテストの大賞作品を見るたびに実感させられた。
一文目から引き込む文章力。
多くの言葉から的確な言葉選びができる圧倒的な語彙力。
一瞬でひきつけてしまうタイトル。
すべてが私にないものばかりで。
新刊というポップに囲まれて平積みされている本を見るのが痛くてつらい。
自分の才能のなさを見せつけられているようで。
それでも、新刊を眺めに書店に行く私はどこかで期待しているのかもしれない。
いつかここに自分の本が並ぶんだという淡い期待がどこかに。
まだ見えぬ明日の世界で、誰かに認めてもらえるかもしれないって。
小説サイトを開いて、お知らせを確認する。
今日出る新刊は水無月さんという方の本、『少年の終末。』
深海のような深い青色の表紙に、明朝体で縦書きにタイトルと作者名が白く印刷された画像。
今から探しに行くのはこの本。
水無月さんは、私と同じ17歳。
スマホの画面消して、細く息を吐く。
見慣れない町の風景が目に映る。
『次は、梅が丘、梅が丘、終点です。』
少しずつ電車の速度が緩んでいく。
スマホをカバンにしまって、財布があるかを確認して。
私は駅の改札を通りぬけた。