率直な感想としては、すごかったとしか言いようがない。
圧倒された。『少年の終末。』と同じくらい、いや、それ以上に。
『醜い透明な藍に溺れる』は、『少年の終末。』とはまた違う感動があった。

世間にとらわれた少女の話。
『少年の終末。』とリンクする場面があって、読んでいて本当に楽しい。
世間を雨にとらえる晴樹君の想像力に驚かされる。
永遠に読んでいたいと思ってしまう『醜い透明な藍に溺れる』。
読み始めてから止まらなくって、一瞬で読んでしまった。

読み終わったよ、と報告しようと顔を上げる。
私の視界に、真剣に私の小説を読んでいる晴樹君が映る。
少しうれしくて、口元が緩んでしまう。

こんな風に真剣に読んでもらえているのが嬉しい。
いつか、誰かのためになるようにって書き続けていたものを読んでくれる人がいるのは本当に嬉しいなと思う。

小さいころから、自分の小説が書店に並ぶことを夢見ていた。
でも、現実は甘くない。
気づかないうちに気づいていた。
書籍化できるのはほんの一部の天才で、ほんの一握りの人間。
私はそこにはいない。

そこにいるのは、晴樹君のような本物。
私みたいな凡人は、握られそうにもならない。

視線を下に向けると、晴樹君のスマホ。
『醜い透明な藍に溺れる』がつづられた晴樹君のスマホ。

ここに出る少女は、私に似ている気がする。

他人の目を気にして、自分のことを伝えられなくて。
ふさぎこんで。

この少女と私の違いは、自分から行動したかどうか。
私は、怖くてここから動けない。
少女は怖くても踏み出した、自分のために。

誰かのためといって、誰かのせいにして。
一歩も動こうとしない私。

ひたすらにパソコンの前でカタカタと小説を書いているだけ。
成長のしない文章を書いている。

どうやっても、私は私を好きになれそうにないのだ。