6月。三年生の先輩が引退して、部活動紹介冊子の活動を本格的に開始する。

撮影許可、撮影スケジュール、撮影、構成づくり、印刷、製本。

毎年写真部全員で行っていた作業を今年は一人で行う。

私の通う高校は私立の進学校だから、部活動があまり盛んではない。

部活に入っていても、指定校推薦を有利にするための人が多い。だから、写真部のように活動をしない生徒もわんさかいる。

そこで、部活動を盛んにするため、6年ほど前から部活動紹介冊子を写真部で作るようになった。

という話を先輩から聞いた。


まず最初に始めるのは撮影許可。

撮影できる日程の確認を行って、スケジュールを組む。

全部で15個の部活動のうち、14個は許可を取れた。

クラスメートから各部の部長さんがいるクラスを聞いて2年生棟に行き、許可を撮る。

ただ、最後の一つ、吹奏楽部だけが許可を取れていないのだ。

部長さんがいるクラスが、わからなくて。

聞けばいいだけだと思う。クラスの中には一人だけ吹部がいるし。

だけど、聞きにくいのだ。

栗本君だから。

それに、吹奏楽部には嫌な思い出もある。

中学時代の嫌な思い出。

いつまでも引きずってちゃいけないってことくらいはわかってる。

でも嫌なものは嫌なんだ。


それでもやっぱり部活動の一環として聞かなくてはならない。

栗本君のあの視線がぶつかるのが憂鬱で仕方がない。

全部見透かしてそうで。

嫌だなぁ、と思いつつ座っていた椅子から重い腰を上げて、栗本君が座る窓側の席へ足を動かす。

窓の外を見ている栗本君の横顔は外の景色をとらえている。

今話しかけても大丈夫だろうか。気を悪くしないだろうか。

顔に出さないように気を付けながら、色いろんな考えをめぐらす。

多分、大丈夫だと思う。