栗本君がごみ捨てから帰ってきて、反省会が始まる。

「今日の一言は、『映優が抜けていた』です。」

清掃点検の新谷(にいたに)君が清掃点検票を読み上げると、また笑いの渦が生まれた。

「映優、ついに一言に乗るようになってるよ」

「コンセント入れてなかったり、ちびで黒板とどいてなかったりしたもんな。」

いつものように楽しんでいる顔で私をのぞき込む鈴奈と佐藤君。

「た、たまたまだし!!」

上手な返事にすねたような顔をして二人に反論する。

教室にいるみんなが笑っている。

「もう!早く清掃終わらせて部活行こうよ!」

「ごめんって、じゃあ、最後に先生からお願いします」

笑いをこらえながら先生に話を振る鈴奈。

先生はいつもと同じようなことを繰り返している。

毎日聞いていた先生の言葉は、使っている単語は違えど、いつも同じ内容。

きっと、ほかの班が清掃当番の時も同じことを言っているのだろう。

「それと、神楽さん」

「ふぁ、ふぁい!」

びっくりした、まさか呼ばれると思ってなかった。

素で変な声が出た。

「ふふ、やっぱり少し抜けているところがあるから、ひとつひとつ丁寧にこなすのよ?」

「......。はーい。」

よし、とうなずく担任。

くすくすと笑う班のメンバー。

やっぱり、気を抜いちゃいけないな。と改めて思う。

今回はある程度求められた反応ができたけど、これから先、無意識で求められた反応ができるかどうかはわからない。

いつでも気を抜かずに、周りを見て、求められた私でいられるようにしないと。

「これで反省を終わります。」

やっと終わった反省会。

部活に行こうと準備をしていると、やっぱりいつも道理。

「はーゆ、噛んでたね」

「だって、びっくりしたんだよ、突然呼ばれるから」

嘘はついてない。本当にびっくりしたから。

「さすが神楽。いつでも通常運転。」

「もう!私、部活行くから!」

二人に言い残して部室へと急ぐ。

誰もいない廊下で、ふと思い出した。

反省会の時、栗本君、笑ってたっけ。
必死に頭を動かして、反省会の時の栗本君を思い出す。

あの時、栗本君は、

あの冷たい瞳で。

私を、見ていた。