すると外が何だか騒がしくなってきた。そして使用人の男が1人韓媛(からひめ)達のいる部屋に飛び込んできた。

(つぶら)様、大変です! 家の外にたくさんの兵がやってきています!!」

円と韓媛は思わず息を飲んだ。恐らく大泊瀬皇子(おおはつせのおうじ)が率いる兵がやってきてしまったようだ。

(そ、そんな……本当に大泊瀬皇子が兵を連れてきてしまったの)

「そうか、分かった。恐らく大泊瀬皇子が連れてきた兵達だろう。では私が皇子と話しがしたいという旨を伝えてほしい」

それを聞いた使用人の男も一瞬戸惑ったが、すぐに「分かりました!」といってそのまま急いで部屋を出ていった。

使用人の男がいなくなると円は改めて韓媛に話しかけてくる。彼はとても真剣な表情だ。

「私は葛城をまとめている者としての責任がある。そしてわざわざ私を頼ってこられた眉輪(まよわ)様も、何とかお許しもらえないか話しをしてみるつもりだ」

(お、お父様。そのようなことが本当にできるの?)

韓媛はこんな真剣な表情をした父親を見るのは初めてだった。彼はここ葛城のことを他の誰よりも考えている。

「韓媛、家の前には兵がたくさんいる。なので裏からそっと外に出て、一旦ここを離れるんだ。これはお願いではなく命令だ。
お前も葛城の娘なら大人しく私に従え!」

韓媛もそこまで彼にいわれてしまうと、よういい返すことができない。

「分かりました、お父様。お父様の指示に従います」

そして韓媛は立ち上がると、涙を必死で堪えながらその場を後することにする。

そして彼女は「お父様、どうかご無事で」と言って、彼女は急いでこの場所を離れて行った。


それから葛城円は、大泊瀬皇子達の動向を確認すべく部屋を後にした。