「あぁ君達と一緒で、久々に吉野に来てみたくなってね。それで数名を引き連れて狩りでもしようと思ったのさ」
そういわれて大泊瀬皇子が見ると、少し離れた所に、彼の従者らしき者が数名立っていた。
「ふん、息子2人は連れてきてないのか」
「あぁ、先日2人が遊んでいた時に、弟の弘計が怪我をしてしまった。
そこまで心配するものでもないが、それもあったので、兄の億計共々連れてくるの控えさせた」
彼の言う、億計と弘計は市辺皇子と荑媛の間に生まれた皇子である。
「まぁ、弘計が怪我をされたのですか?」
韓媛もこの兄弟とは面識があるので、少し心配した。2人は韓媛より数歳年下の男の子達で、荑媛を介して仲良くしている。
「今回吉野に来れなかったから、弘計は今頃、宮で拗ねてるだろうけどね。その点億計は物分かりが良いから納得していたが」
そう言って市辺皇子は少し愉快そうにしている。市辺皇子と荑媛の婚姻も言わば政略的なものではあったが、意外に2人は仲良くしていた。
こうしてその後、市辺皇子は自分達はこれから狩りに行くと言って、従者らを引き連れて離宮を後にした。
大泊瀬皇子と韓媛は、まだ朝食を取っていなかったので、ひとまず食事を取る事にした。
「でも、市辺皇子まで来られてたのは意外でした。荑媛も元気にしてるのかしら」
荑媛の父親の蟻臣と、韓媛の父親の円が従兄弟同士の関係になる。よって荑媛と韓媛も必然的に昔から仲良くしていた。
「さぁな。特に悪い話しは聞かないから、問題はないだろう。もし何かあるなら市辺皇子が吉野になぞ来ない」
(まぁ、それはそうでしょうけど……)
韓媛はそんな大泊瀬皇子を少し呆れながら見ていた。人間誰しも、性格の合う合わないはあるので、仕方ないのかもしれないが。
「市辺皇子と荑媛はとても仲が良いご夫婦ですからね」
韓媛はそう言ってクスッと笑った。2人は政略的な婚姻とは聞いているが、それでも仲良く出来ているのはとても良い事だ。
「まぁ、あいつの場合は、俺の母上の影響が強いのだろう。昔から母上は、あいつに将来女性をちゃんと大事にするようにと良くいっていたそうだ」
「あの皇后様が、そのような事をいわれていたのですか?」
「あぁ、前の大王であった父上は、母上を娶るまでは、結構色んな娘に手を出していたそうだ。そんな父上を見て、母上が市辺皇子にいい聞かせていたんだ。市辺皇子は母上の事をとても慕っていたから、その教えを忠実に守ってるのだろう」
韓媛はそれを聞いて、思わず目を丸くした。彼の父親がそんな人だったとは全く知らなかった。
「確かに大王や皇子ともなれば、複数の姫を娶ったりします。なのでけして珍しい事ではありません。でも雄朝津間大王もそういう事があったのは意外でした」
大和の大王や皇子なら、どちらかと言えば普通の事なのだが、雄朝津間大王は皇后をとても大事にしていた印象だったので、これは少し意外な話しだと思った。
そういわれて大泊瀬皇子が見ると、少し離れた所に、彼の従者らしき者が数名立っていた。
「ふん、息子2人は連れてきてないのか」
「あぁ、先日2人が遊んでいた時に、弟の弘計が怪我をしてしまった。
そこまで心配するものでもないが、それもあったので、兄の億計共々連れてくるの控えさせた」
彼の言う、億計と弘計は市辺皇子と荑媛の間に生まれた皇子である。
「まぁ、弘計が怪我をされたのですか?」
韓媛もこの兄弟とは面識があるので、少し心配した。2人は韓媛より数歳年下の男の子達で、荑媛を介して仲良くしている。
「今回吉野に来れなかったから、弘計は今頃、宮で拗ねてるだろうけどね。その点億計は物分かりが良いから納得していたが」
そう言って市辺皇子は少し愉快そうにしている。市辺皇子と荑媛の婚姻も言わば政略的なものではあったが、意外に2人は仲良くしていた。
こうしてその後、市辺皇子は自分達はこれから狩りに行くと言って、従者らを引き連れて離宮を後にした。
大泊瀬皇子と韓媛は、まだ朝食を取っていなかったので、ひとまず食事を取る事にした。
「でも、市辺皇子まで来られてたのは意外でした。荑媛も元気にしてるのかしら」
荑媛の父親の蟻臣と、韓媛の父親の円が従兄弟同士の関係になる。よって荑媛と韓媛も必然的に昔から仲良くしていた。
「さぁな。特に悪い話しは聞かないから、問題はないだろう。もし何かあるなら市辺皇子が吉野になぞ来ない」
(まぁ、それはそうでしょうけど……)
韓媛はそんな大泊瀬皇子を少し呆れながら見ていた。人間誰しも、性格の合う合わないはあるので、仕方ないのかもしれないが。
「市辺皇子と荑媛はとても仲が良いご夫婦ですからね」
韓媛はそう言ってクスッと笑った。2人は政略的な婚姻とは聞いているが、それでも仲良く出来ているのはとても良い事だ。
「まぁ、あいつの場合は、俺の母上の影響が強いのだろう。昔から母上は、あいつに将来女性をちゃんと大事にするようにと良くいっていたそうだ」
「あの皇后様が、そのような事をいわれていたのですか?」
「あぁ、前の大王であった父上は、母上を娶るまでは、結構色んな娘に手を出していたそうだ。そんな父上を見て、母上が市辺皇子にいい聞かせていたんだ。市辺皇子は母上の事をとても慕っていたから、その教えを忠実に守ってるのだろう」
韓媛はそれを聞いて、思わず目を丸くした。彼の父親がそんな人だったとは全く知らなかった。
「確かに大王や皇子ともなれば、複数の姫を娶ったりします。なのでけして珍しい事ではありません。でも雄朝津間大王もそういう事があったのは意外でした」
大和の大王や皇子なら、どちらかと言えば普通の事なのだが、雄朝津間大王は皇后をとても大事にしていた印象だったので、これは少し意外な話しだと思った。