そして、今回の遠出の話しがまとまりかけた丁度その時だった。
急に部屋の外から、使用人の女性の声が聞こえてきた。
「円様、今丁度大泊瀬皇子が来られましたが、こちらにこのままお通しして宜しいでしょうか?」
どうやら今日は、大泊瀬皇子が来る予定の日のようだ。
「あぁ、そうだったな。ではこのままここに通してくれるか」
円は外にいる使用人に、そのまま返事を返した。皇子がもう来てるとなると、長く本人を待たせるのも申し訳ない。
「円様、分かりました。では大泊瀬皇子には、そのようにお伝えします」
使用人はそういうと、いそいそと大泊瀬皇子を呼びに行くため、円のいる部屋を後にした。
(お父様と大泊瀬皇子がお話しされるのなら、私は部屋を出た方が良さそうね)
円と使用人の会話を聞いた韓媛は、そのまま立ち上がり、そして円に言った。
「お父様、大泊瀬皇子も来られるようなので、私は失礼しますね」
「あぁ、そうだな。韓媛、悪いが吉野の件はまた後ほど話しをしよう」
彼は少し申し訳なさそうにして、彼女にそう答えた。
「はい、大丈夫です。では私は一旦失礼させていただきます」
韓媛はそういって父親の部屋を後にし、自身の部屋に戻る事にした。
(でも吉野に行くのは本当に楽しみね。きっと綺麗な紅葉が沢山見られるはず。お父様には本当に感謝しないと……)
そんなふうに彼女が吉野の紅葉の事をあれこれ考えながら歩いていると、丁度彼女の目先の向こうから、大泊瀬皇子がやって来るのが見えた。
(まぁ、大泊瀬皇子だわ)
前回の彼の妃選びの事があって以降、彼とは会っていなかったので、どう声をかければ良いか一瞬悩んだ。
草香幡梭姫との婚姻も一旦保留になったと聞いていたので、何とも気まずいと彼女は思った。
(彼には、先日の婚姻の事は余り触れずにおいた方が良いかしら?)
韓媛は大泊瀬皇子が近くに来るとふと彼を見る。
先日の大草香皇子の事件後とはいえ、彼は至って落ち着いた感じだ。
「これは、大泊瀬皇子。今日もわざわざ葛城まで、ご苦労様です」
韓媛はとりあえず、そう皇子に挨拶をした。こういう時は、普段と変わらずに接する方が良いだろう。
「あぁ、韓媛。お前も元気そうだな。円の部屋にいたのか?」
この先に葛城円の部屋があるので、きっと先程まで彼女は父親の所にいたのだろうと彼は思った。
「はい、父とは先ほどまで、少し話しをしておりました」
韓媛は、変に動揺するわけでもなく、彼に軽く笑みを見せながら答える。
そんな韓媛を目にして、大泊瀬皇子は少し不思議に思う。
(何やら、嬉しそうな表情で歩いてる感じだったが、何か良いことでもあったのか)
「そうか、そんな時に俺が来てしまって済まない」
大泊瀬皇子もそんな彼女の様子が少し気にはなるものの、円を待たせている事もあり、ひとまずその件は触れないでおく事にした。
「先日大変な事件があったのは、父から聞いております。皇子も余り思い詰めないで下さいね」
韓媛はとりあえず、大泊瀬皇子の今の心境を気遣ってそういった。
「お前にも心配をかけて悪い。俺は特に気にやんではないので大丈夫だ」
(やっぱり彼は本当に強い人だわ)
そんな彼を見て、やはり彼は大和の皇子だなと少し感心した。
急に部屋の外から、使用人の女性の声が聞こえてきた。
「円様、今丁度大泊瀬皇子が来られましたが、こちらにこのままお通しして宜しいでしょうか?」
どうやら今日は、大泊瀬皇子が来る予定の日のようだ。
「あぁ、そうだったな。ではこのままここに通してくれるか」
円は外にいる使用人に、そのまま返事を返した。皇子がもう来てるとなると、長く本人を待たせるのも申し訳ない。
「円様、分かりました。では大泊瀬皇子には、そのようにお伝えします」
使用人はそういうと、いそいそと大泊瀬皇子を呼びに行くため、円のいる部屋を後にした。
(お父様と大泊瀬皇子がお話しされるのなら、私は部屋を出た方が良さそうね)
円と使用人の会話を聞いた韓媛は、そのまま立ち上がり、そして円に言った。
「お父様、大泊瀬皇子も来られるようなので、私は失礼しますね」
「あぁ、そうだな。韓媛、悪いが吉野の件はまた後ほど話しをしよう」
彼は少し申し訳なさそうにして、彼女にそう答えた。
「はい、大丈夫です。では私は一旦失礼させていただきます」
韓媛はそういって父親の部屋を後にし、自身の部屋に戻る事にした。
(でも吉野に行くのは本当に楽しみね。きっと綺麗な紅葉が沢山見られるはず。お父様には本当に感謝しないと……)
そんなふうに彼女が吉野の紅葉の事をあれこれ考えながら歩いていると、丁度彼女の目先の向こうから、大泊瀬皇子がやって来るのが見えた。
(まぁ、大泊瀬皇子だわ)
前回の彼の妃選びの事があって以降、彼とは会っていなかったので、どう声をかければ良いか一瞬悩んだ。
草香幡梭姫との婚姻も一旦保留になったと聞いていたので、何とも気まずいと彼女は思った。
(彼には、先日の婚姻の事は余り触れずにおいた方が良いかしら?)
韓媛は大泊瀬皇子が近くに来るとふと彼を見る。
先日の大草香皇子の事件後とはいえ、彼は至って落ち着いた感じだ。
「これは、大泊瀬皇子。今日もわざわざ葛城まで、ご苦労様です」
韓媛はとりあえず、そう皇子に挨拶をした。こういう時は、普段と変わらずに接する方が良いだろう。
「あぁ、韓媛。お前も元気そうだな。円の部屋にいたのか?」
この先に葛城円の部屋があるので、きっと先程まで彼女は父親の所にいたのだろうと彼は思った。
「はい、父とは先ほどまで、少し話しをしておりました」
韓媛は、変に動揺するわけでもなく、彼に軽く笑みを見せながら答える。
そんな韓媛を目にして、大泊瀬皇子は少し不思議に思う。
(何やら、嬉しそうな表情で歩いてる感じだったが、何か良いことでもあったのか)
「そうか、そんな時に俺が来てしまって済まない」
大泊瀬皇子もそんな彼女の様子が少し気にはなるものの、円を待たせている事もあり、ひとまずその件は触れないでおく事にした。
「先日大変な事件があったのは、父から聞いております。皇子も余り思い詰めないで下さいね」
韓媛はとりあえず、大泊瀬皇子の今の心境を気遣ってそういった。
「お前にも心配をかけて悪い。俺は特に気にやんではないので大丈夫だ」
(やっぱり彼は本当に強い人だわ)
そんな彼を見て、やはり彼は大和の皇子だなと少し感心した。