「まぁ、折角の母上からの提案だ。正直全く乗り気はしないが、それで納得することにする」

大泊瀬皇子(おおはつせのおうじ)は少しやれやれといった感じで答えた。

阿佐津姫(あさつひめ)も大泊瀬皇子のその言葉を聞いて、渋々納得することにした。

「えぇ、ではそうしましょう。じゃあ大泊瀬(おおはつせ)悪いけど、あなたからこの件を市辺皇子(いちのへのおうじ)に伝えておいてね」

忍坂姫は大泊瀬皇子にそう告げた。彼女はどこまでも彼らを仲良くさせたいようだ。

「はぁ!どうして俺からあいつを誘わなければならないのだ!!」

大泊瀬皇子は恐らく今までで一番嫌そうな表情をしていった。

「あら、そうしてよ大泊瀬。そもそも狩りをするのはあなたと市辺皇子なのでしょ?それならあなたが声をかけるべきだわ」

阿佐津姫は少し愉快そうにしてそう言った。大泊瀬皇子が市辺皇子を誘う場面などそうそう見られるものではない。

大泊瀬皇子は若干の怒りを見せながら、阿佐津姫を一瞬睨んだ。それほどまでに彼は市辺皇子を嫌っているのだろう。

だが大泊瀬皇子は、忍坂姫と阿佐津姫から挟み撃ちの状況のため、よう反論が返せない。ここは諦めて従った方がよさそうだ。

「くそ!俺があいつにいえば良いのだな。だがこんなことは、今回だけだからな」

大泊瀬皇子は少しふてくされながらそういった。彼にとってはかなり難解な頼まれごとだ。


こうしてその後、大泊瀬皇子は市辺皇子の元へ使いを出すことにした。

忍坂姫からは直接自分で言いに行ったらといわれたが、彼はそれには断固反対する。

そして市辺皇子からの返答は、今回の遠出に意外にも同行するとのことだった。


その後大泊瀬皇子は韓媛(からひめ)にもこの件を伝える。そして彼女からも無事同意を得ることができた。


こうして大泊瀬皇子と市辺皇子は狩りに、忍坂姫と阿佐津姫、さらに韓媛は息長の家にいくことになった。