「稚沙、椋毘登、2人ともしっかりしろ!」
(うーん、いったい誰だ)
椋毘登は聞き覚えのある声を聞いて、とっさに目を覚ました。そこは先ほどいた場所からどうやら移動させられていたようで、斑鳩寺の建物の中だった。
外はすっかり暗くなっていて、雨の音がザーザーと聞こえてくる。
そして椋毘登に声をかけたのは厩戸皇子と、なぜか稚沙と同じ女官の古麻まで一緒にいた。
「厩戸皇子に、古麻まで......俺、戻って来れたんですね」
「おい、椋毘登、意識をしっかり持て。君が黄泉の国に行くのはまだ早すぎる!」
「そうですよ!あなたのおかげで稚沙も大きな怪我をせずに済んだんですから!!」
「そうか稚沙も......って、稚沙は!」
椋毘登は少し頭を抱えながら、いきなり体を起こした。幸い体に少し痛みはあるものの、とくに大きな怪我はなさそうだ。
「椋毘登、君は頭を打っているんだぞ、余り体を動かしてはいけない」
だが彼はそんな厩戸皇子の言葉など全く気にとめず、自分の横に寝かされていた稚沙に体を向ける。側には厩戸皇子の雪丸もいて、彼女の体にピッタリとくっ付いていた。
それから椋毘登は、必死に彼女に呼びかけた。
「おい、稚沙、お願いだから目を開けてくれよ!」
すると稚沙の方も意識が段々と戻ってきたようで、ゆっくりと目を覚ました。
「あ、椋毘登の声がすると思ったら、椋毘登本人だったのね。本当に良かった。私達戻って来れたのね」
「あぁ、そうだよ。稚沙......お、お前が無事で本当に良かった......」
椋毘登は稚沙の意識が戻ったのをみて、その瞬間に目から沢山の涙を流した。そしてそのまま彼女の上半身を思いっきり抱きしめ、その場でわんわんと泣いた。
周りの者達は、そんな2人の様子を目の当たりにし呆気にとられる。そして誰もが、ただただ呆然と見守る他なかった。
その後しばらくして、ようやく落ち着いた2人だったが、まだ暫くは休ませた方が良いとのことで、そのままここで休ませることにした。
また古麻も、稚沙が意識を失ったと聞いて、慌てて斑鳩寺に駆けつけてきたようだ。普段余りこんな大胆な行動する彼女ではないが、それぐらい稚沙のことが心配だったのだろう。
そんな彼らの様子を見届けた厩戸皇子は、雪丸を連れて寺の外へと出ていった。外は雨もすっかり止み、月が雲から姿をほんのりと覗かせていて、彼はそん夜空を見上げた。明日はきっと良い天気になるだろう。
「本当に、これも神の御心に感謝しなくては」
だがそんな時に「厩戸皇子、どうやら状況はおさまったようですね」と突然に誰かに声をかけられる。
皇子はふと振り返ってその相手を見た。すると彼は一瞬驚きはするものの、少し愉快そうにしてその人物にいった。
「まさか、あなたまでここに出向かれるとは、やはりご心配されていたのですね、宇志殿」
そこに現れたのは豪族平群氏の実力者である、平群宇志だった。蘇我氏ほどではないにしても、彼も飛鳥の有力豪族の1人である。
(うーん、いったい誰だ)
椋毘登は聞き覚えのある声を聞いて、とっさに目を覚ました。そこは先ほどいた場所からどうやら移動させられていたようで、斑鳩寺の建物の中だった。
外はすっかり暗くなっていて、雨の音がザーザーと聞こえてくる。
そして椋毘登に声をかけたのは厩戸皇子と、なぜか稚沙と同じ女官の古麻まで一緒にいた。
「厩戸皇子に、古麻まで......俺、戻って来れたんですね」
「おい、椋毘登、意識をしっかり持て。君が黄泉の国に行くのはまだ早すぎる!」
「そうですよ!あなたのおかげで稚沙も大きな怪我をせずに済んだんですから!!」
「そうか稚沙も......って、稚沙は!」
椋毘登は少し頭を抱えながら、いきなり体を起こした。幸い体に少し痛みはあるものの、とくに大きな怪我はなさそうだ。
「椋毘登、君は頭を打っているんだぞ、余り体を動かしてはいけない」
だが彼はそんな厩戸皇子の言葉など全く気にとめず、自分の横に寝かされていた稚沙に体を向ける。側には厩戸皇子の雪丸もいて、彼女の体にピッタリとくっ付いていた。
それから椋毘登は、必死に彼女に呼びかけた。
「おい、稚沙、お願いだから目を開けてくれよ!」
すると稚沙の方も意識が段々と戻ってきたようで、ゆっくりと目を覚ました。
「あ、椋毘登の声がすると思ったら、椋毘登本人だったのね。本当に良かった。私達戻って来れたのね」
「あぁ、そうだよ。稚沙......お、お前が無事で本当に良かった......」
椋毘登は稚沙の意識が戻ったのをみて、その瞬間に目から沢山の涙を流した。そしてそのまま彼女の上半身を思いっきり抱きしめ、その場でわんわんと泣いた。
周りの者達は、そんな2人の様子を目の当たりにし呆気にとられる。そして誰もが、ただただ呆然と見守る他なかった。
その後しばらくして、ようやく落ち着いた2人だったが、まだ暫くは休ませた方が良いとのことで、そのままここで休ませることにした。
また古麻も、稚沙が意識を失ったと聞いて、慌てて斑鳩寺に駆けつけてきたようだ。普段余りこんな大胆な行動する彼女ではないが、それぐらい稚沙のことが心配だったのだろう。
そんな彼らの様子を見届けた厩戸皇子は、雪丸を連れて寺の外へと出ていった。外は雨もすっかり止み、月が雲から姿をほんのりと覗かせていて、彼はそん夜空を見上げた。明日はきっと良い天気になるだろう。
「本当に、これも神の御心に感謝しなくては」
だがそんな時に「厩戸皇子、どうやら状況はおさまったようですね」と突然に誰かに声をかけられる。
皇子はふと振り返ってその相手を見た。すると彼は一瞬驚きはするものの、少し愉快そうにしてその人物にいった。
「まさか、あなたまでここに出向かれるとは、やはりご心配されていたのですね、宇志殿」
そこに現れたのは豪族平群氏の実力者である、平群宇志だった。蘇我氏ほどではないにしても、彼も飛鳥の有力豪族の1人である。



