稚沙と椋毘登が金堂の側までやってくると、犯人らしき人物が、今にも金堂の中に入ろうとしていた。
相手はどうやら4人組の男たちで、身なりからしても余り身分がある感じには見えない。恐らく彼らは主犯者に雇われた者たちなのだろう。
「稚沙、お前はここにいろ!!」
椋毘登は彼女にそういうなり、腰の鞘からすばやく刀を抜く。そしてそのまま、男達めがけて走り向かっていった。
相手の男達も椋毘登の突然の登場に驚き、慌てて各々が刀を抜く。だがその構え方からして、彼らはそこまで刀を使いこなせている感じではなかった。
「ふん、そんな構えで俺に刃を向ける気か」
椋毘登は相手の刀の実力を瞬時に見極める。そしてまず右端にいた男に狙いを定めて、腕に刀を切りつけた。
「ぎゃあー!!」
男は物凄い激痛で刀を持てなくなり、その場に崩れ落散るようして倒れていく。そしてそのまま動けずに、その場にうずくまってしまった。
すると椋毘登は、他の連中に突き刺すような目線を向け、素早く次の相手に動いた。
彼は相手が動揺したその瞬間を狙って、一気に2人連続で切りつける。この刀の扱いはまさに早業で、この刹那の判断力と素早い動き、これこそが椋毘登の刀の強さの秘訣だった。
「こ、こんな話は聞いていないぞ......」
最後の男はどうにかしてこの場から逃げ出そうと、辺りを見わたす。だが出口の門は椋毘登の後ろにあるため、もうこのまま彼に飛び掛かる以外に方法がない。
一方の椋毘登もこの男をこのまま逃したくないのと、後ろには稚沙がいる。なので彼女に危害を及ぶのも危惧して、何としてもここで食い止めたかった。
「こ、こうなったら!」
男は半端やけになって刀を椋毘登へ向け、勢いよく切りに掛かりいく。だがその甲斐も虚しく、彼は呆気なく切られてしまった。
「く、くそっ!」
だが椋毘登は、命までも奪うことは考えていなかったようで、致命的な傷は彼らに負わせてはいない。
「ふぅー、このまま捕まえて、洗いざらい吐かせるか」
(椋毘登、あなたって相変わらず本当に強いわね......)
するとこの異変に気付き、他の者たちも次々とその場にやってくる。この4人の男達は、その後紐に繋がられて、無事捕まえることができた。
「椋毘登、こいつらを白状させれば、その先の主犯を見つけられるぞ」
そう話すのは境部摩理勢で、どうやら彼も今日は斑鳩寺に来ていたようである。
そしてその横には外から帰ってきたでだろう、厩戸皇子も一緒だった。
「えぇ、そうですね。だがこれは蘇我が仕向けた者ではないようだ」
「ふん、残念だったな、犯人が俺でなくて」
摩理勢は椋毘登を半端からかうようにしていった。
結局のところ、最初から椋毘登は彼になめられていたようだ。
まあ、摩理勢自身も犯人が自分でないと分かっていたのだから、当然といえば当然のことである。
だが稚沙は、そんな2人の会話を聞いて、これで蘇我の人達が争わずに済むと分かり、ほっと胸を撫で下ろした。
(あー、本当に良かったわ)
「でもあなたが、奇妙な動きをしていたのは確かですよね?」
「あぁ、そうだ。お前も聞いていないか?最近夜に、飛鳥の寺院付近で奇妙な声が聞こえるという話を」
それを聞いた椋毘登や稚沙はその場でハッとした。
まずは寺院を守るのが先決だった為、彼らもそこまでは気が向いていなかった。
(そうだ、この騒ぎですっかり忘れていたけど、もう一つそんな話があったんだわ)
「それも子供のような声が聞こえるいう話だった。そこで俺はそちらを調べていたのさ。まぁ、その結果は何ともあっけない結末だったがな」
(へぇ!?あけっない?)
稚沙も何のことか分からず、思わず首を傾げる。突然にそんな風に言われても、何のことだかさっぱりで、全く意味が分からない。
また摩理勢の方もそう話してから、大きくため息をつく。いつも威圧的な彼がこんな様子を見せるなんて、何とも意外だ。
相手はどうやら4人組の男たちで、身なりからしても余り身分がある感じには見えない。恐らく彼らは主犯者に雇われた者たちなのだろう。
「稚沙、お前はここにいろ!!」
椋毘登は彼女にそういうなり、腰の鞘からすばやく刀を抜く。そしてそのまま、男達めがけて走り向かっていった。
相手の男達も椋毘登の突然の登場に驚き、慌てて各々が刀を抜く。だがその構え方からして、彼らはそこまで刀を使いこなせている感じではなかった。
「ふん、そんな構えで俺に刃を向ける気か」
椋毘登は相手の刀の実力を瞬時に見極める。そしてまず右端にいた男に狙いを定めて、腕に刀を切りつけた。
「ぎゃあー!!」
男は物凄い激痛で刀を持てなくなり、その場に崩れ落散るようして倒れていく。そしてそのまま動けずに、その場にうずくまってしまった。
すると椋毘登は、他の連中に突き刺すような目線を向け、素早く次の相手に動いた。
彼は相手が動揺したその瞬間を狙って、一気に2人連続で切りつける。この刀の扱いはまさに早業で、この刹那の判断力と素早い動き、これこそが椋毘登の刀の強さの秘訣だった。
「こ、こんな話は聞いていないぞ......」
最後の男はどうにかしてこの場から逃げ出そうと、辺りを見わたす。だが出口の門は椋毘登の後ろにあるため、もうこのまま彼に飛び掛かる以外に方法がない。
一方の椋毘登もこの男をこのまま逃したくないのと、後ろには稚沙がいる。なので彼女に危害を及ぶのも危惧して、何としてもここで食い止めたかった。
「こ、こうなったら!」
男は半端やけになって刀を椋毘登へ向け、勢いよく切りに掛かりいく。だがその甲斐も虚しく、彼は呆気なく切られてしまった。
「く、くそっ!」
だが椋毘登は、命までも奪うことは考えていなかったようで、致命的な傷は彼らに負わせてはいない。
「ふぅー、このまま捕まえて、洗いざらい吐かせるか」
(椋毘登、あなたって相変わらず本当に強いわね......)
するとこの異変に気付き、他の者たちも次々とその場にやってくる。この4人の男達は、その後紐に繋がられて、無事捕まえることができた。
「椋毘登、こいつらを白状させれば、その先の主犯を見つけられるぞ」
そう話すのは境部摩理勢で、どうやら彼も今日は斑鳩寺に来ていたようである。
そしてその横には外から帰ってきたでだろう、厩戸皇子も一緒だった。
「えぇ、そうですね。だがこれは蘇我が仕向けた者ではないようだ」
「ふん、残念だったな、犯人が俺でなくて」
摩理勢は椋毘登を半端からかうようにしていった。
結局のところ、最初から椋毘登は彼になめられていたようだ。
まあ、摩理勢自身も犯人が自分でないと分かっていたのだから、当然といえば当然のことである。
だが稚沙は、そんな2人の会話を聞いて、これで蘇我の人達が争わずに済むと分かり、ほっと胸を撫で下ろした。
(あー、本当に良かったわ)
「でもあなたが、奇妙な動きをしていたのは確かですよね?」
「あぁ、そうだ。お前も聞いていないか?最近夜に、飛鳥の寺院付近で奇妙な声が聞こえるという話を」
それを聞いた椋毘登や稚沙はその場でハッとした。
まずは寺院を守るのが先決だった為、彼らもそこまでは気が向いていなかった。
(そうだ、この騒ぎですっかり忘れていたけど、もう一つそんな話があったんだわ)
「それも子供のような声が聞こえるいう話だった。そこで俺はそちらを調べていたのさ。まぁ、その結果は何ともあっけない結末だったがな」
(へぇ!?あけっない?)
稚沙も何のことか分からず、思わず首を傾げる。突然にそんな風に言われても、何のことだかさっぱりで、全く意味が分からない。
また摩理勢の方もそう話してから、大きくため息をつく。いつも威圧的な彼がこんな様子を見せるなんて、何とも意外だ。



