雄朝津間皇子は、急に忍坂姫が話さなくなったので少し不思議に思った。
そして彼がふと彼女の顔を見ると、少し動揺しているふうにも思えた。
「忍坂姫、どうかしたか?」
彼がふと忍坂姫の頬に触れると、彼女が一瞬ビクンと震えた。
少し緊張させてしまっているみたいだ。
(今これ以上すると、怯えさせてしまうか)
雄朝津間皇子はそう思って、ふと彼女の頬から手を離した。
最近彼女への接し方には、かなり気を使うようにしていた。
「とりあえず、君に何か不安にさせるような事は要求しない。これからだんだん薄暗くなるだろうから、今日はもうゆっくり休んだら良いさ」
雄朝津間皇子は忍坂姫に優しくそう言った。彼自身今は彼女に余計な不安を与えたくはない。
忍坂姫はそんな皇子の優しさにとても嬉しさを感じた。彼だって疲れているかもしれないのに。
(この人は何だかんだで、人に対する思いやりはとてもある方なのね)
「雄朝津間皇子、有難うございます。ではお言葉に甘えて、今日はもう部屋に戻って休む事にします」
忍坂姫はそう言って立ち上がると「では、皇子失礼しますね」と言って、彼のいる部屋を出ていった。
そして雄朝津間皇子は、そんな彼女の後ろ姿を少し切ない目で見送っていた。
忍坂姫は部屋へ戻って再び横になってから、考え込んでいた。
「やっぱり今回は皇子に迷惑を掛けているし、何かお礼をさせて頂こう。でも皇子が喜ぶ事って何だろう?」
忍坂姫はああでもない、こうでもないと色々考えていた時、ふと台の上の鏡を見た。
「鏡を見たら教えてくれるのかな……いや、今回は自分で考えてみよう」
それから彼女はふと思い付いた。雄朝津間皇子は、何分外に出掛ける事がとても多い。なので、その際に使う餌袋を作ってはどうかと考えた。
餌袋とは、鷹狩りに際して携行した、鷹のえさや獲物を収める竹かごの容器のような物だった。
それ以外に菓子や出先で食べる食料等も入れたりする事もある。
「そうだわ!そう言った物は多くても困る事ないし、折角なんで自分で作ったもの皇子にあげよう。そこまで大きい袋じゃなければ時間も余り掛からないだろうし」
忍坂姫は昔からそう言った物は衣奈津から作り方を教わっていた。そこまで上等な物が作れる訳ではないが、通常使う分に関しては問題なかった。
「じゃあ、早速明日製作に取り掛かる事にしよう!材料等は申し訳ないけど、伊代乃に頼んで用意してもらったら良いわ」
明日は恐らく、ずっとその作業に追われる事になるだろう。
市辺皇子も、明日は使用人に面倒を見てもらうようお願いしたら、特に問題はない。
そう決めると、忍坂姫はそのまま再度眠りに付く事にした。
そして彼がふと彼女の顔を見ると、少し動揺しているふうにも思えた。
「忍坂姫、どうかしたか?」
彼がふと忍坂姫の頬に触れると、彼女が一瞬ビクンと震えた。
少し緊張させてしまっているみたいだ。
(今これ以上すると、怯えさせてしまうか)
雄朝津間皇子はそう思って、ふと彼女の頬から手を離した。
最近彼女への接し方には、かなり気を使うようにしていた。
「とりあえず、君に何か不安にさせるような事は要求しない。これからだんだん薄暗くなるだろうから、今日はもうゆっくり休んだら良いさ」
雄朝津間皇子は忍坂姫に優しくそう言った。彼自身今は彼女に余計な不安を与えたくはない。
忍坂姫はそんな皇子の優しさにとても嬉しさを感じた。彼だって疲れているかもしれないのに。
(この人は何だかんだで、人に対する思いやりはとてもある方なのね)
「雄朝津間皇子、有難うございます。ではお言葉に甘えて、今日はもう部屋に戻って休む事にします」
忍坂姫はそう言って立ち上がると「では、皇子失礼しますね」と言って、彼のいる部屋を出ていった。
そして雄朝津間皇子は、そんな彼女の後ろ姿を少し切ない目で見送っていた。
忍坂姫は部屋へ戻って再び横になってから、考え込んでいた。
「やっぱり今回は皇子に迷惑を掛けているし、何かお礼をさせて頂こう。でも皇子が喜ぶ事って何だろう?」
忍坂姫はああでもない、こうでもないと色々考えていた時、ふと台の上の鏡を見た。
「鏡を見たら教えてくれるのかな……いや、今回は自分で考えてみよう」
それから彼女はふと思い付いた。雄朝津間皇子は、何分外に出掛ける事がとても多い。なので、その際に使う餌袋を作ってはどうかと考えた。
餌袋とは、鷹狩りに際して携行した、鷹のえさや獲物を収める竹かごの容器のような物だった。
それ以外に菓子や出先で食べる食料等も入れたりする事もある。
「そうだわ!そう言った物は多くても困る事ないし、折角なんで自分で作ったもの皇子にあげよう。そこまで大きい袋じゃなければ時間も余り掛からないだろうし」
忍坂姫は昔からそう言った物は衣奈津から作り方を教わっていた。そこまで上等な物が作れる訳ではないが、通常使う分に関しては問題なかった。
「じゃあ、早速明日製作に取り掛かる事にしよう!材料等は申し訳ないけど、伊代乃に頼んで用意してもらったら良いわ」
明日は恐らく、ずっとその作業に追われる事になるだろう。
市辺皇子も、明日は使用人に面倒を見てもらうようお願いしたら、特に問題はない。
そう決めると、忍坂姫はそのまま再度眠りに付く事にした。