「それに、何となく2人で帰りたいとも思ったんだよ。さっき見た君の舞の興奮がまだ残っていたからね」

それを聞いた忍坂姫(おしさかのひめ)は、思いも寄らない事を言われて驚いた。

(まさか雄朝津間皇子(おあさづまのおうじ)がそんな事を思うなんて、これも春に現れる女神の仕業かしら)

そして思わず彼女はクスクスと笑った。


雄朝津間皇子は先程の彼女の舞を見て、思わず彼女が春を彩る花の女神のように思えた。そんな女神を少しの間だけでも、一人占めしてみたいと、ふと彼はそんな事を思ってしまった。

2人はそれぞれの思いを抱えながら、この桜を後にして宮に戻っていた。