「だがそれだと、物部椋垣(もののべのくらかき)の家の部屋に勝手に潜入すると言う事か」

雄朝津間皇子(おあさづまのおうじ)は流石にそれは難しいと言った感じだった。それでもし剣が無かったらどう言い訳すれば良いのか。

「でもこのままだったら、大王も物部伊莒弗(もののべのいこふつ)に責任をとらせざるえなくなる。何だったら、私がその人の部屋に忍び込みます。
雄朝津間皇子、一生のお願いです。聞いてくれたら私皇子の言う事何でも聞きますから!」

忍坂姫(おしさかのひめ)は必死の思いで、彼にそう訴えた。

それを聞いた皇子は少し奇妙な笑みを浮かべて言った。

「へぇー、何でも俺の言う事聞いてくれるんだ」

それを聞いた忍坂姫は、ギクッとした。
自分はもしかしてとんでもない事を言ってしまったのだろうか。

「よし、分かった。そこまで君が言うんなら、協力するよ。確かに物部椋垣はかなり怪しいからね」

「本当ですか、雄朝津間皇子!」

(良かった。皇子に納得して貰えて)

忍坂姫がそう喜んでいると、急に雄朝津間皇子が忍坂姫の側にやって来て、そして彼女の顔を見て言った。

「そのかわり、何でも言う事聞くってのは絶対だからね」

(やばい、どうしよう!!)

「えぇ~と、私で出来る事なら……」

それを聞いた雄朝津間皇子はとても満足そうにして言った。

「じゃあ、明日さっそく物部椋垣の所に行くとしよう」

こうして翌日、2人は物部椋垣の元に向かう事になった。