「皇子、いい加減にして下さい。こんな時に皇子を襲いに来る訳がないじゃないですか」
それを聞いた雄朝津間皇子は、まだ頬に手を当てていた。
忍坂姫から引っ叩かれたのが、相当痛かったみたいだ。
「こんな時間に、あんなふうに飛び付かれたら、普通誰だって襲って欲しいと思うに決まっているだろう」
それから彼の頬の痛みが少し和らいだのを確認して、彼女は話しだした。
「皇子に聞きたい事があるんですが。首元に大きな痣のある男性に心当たりありませんか。それと例えば部屋の外に細長い土器を置いたりとか……」
(一体この子は何を言ってるんだ?)
雄朝津間皇子はとりあえず、忍坂姫に言われた内容について考えてみた。
「えっと、首元に大きな痣がある男性で、部屋の外に細長い土器がある場所...あぁ、それなら伊莒弗の叔父にあたる物部椋垣だな。奴の部屋の前にはそんな感じの土器が確か置いてあった気がする」
(やっぱり……)
忍坂姫は、その人が今回の七支刀を盗んだ犯人かもしれないと思った。
「雄朝津間皇子、私が思うにその人が今回七支刀を盗んだ犯人なんじゃないかと思って」
皇子はいきなりそんな事を言われて唖然とした。この娘は一体何を言ってるんだと。
「一体何を根拠にそんな事を言っているんだ?」
(しまった!まさかお母様から貰った鏡にそれらしき人が映っていたとも言えないし……)
忍坂姫はその場で必死にその言い訳を考えた。
「えっと、私が思うに。今回の七支刀は意図的に盗まれた可能性があると思うんです」
「うん、それで」
彼はとりあえず忍坂姫の話しを聞いて見る事にした。
「今回の件で、恐らく物部伊莒弗はかなり重い処分を受ける事になるでしょう。そうする事で得をする人で、かつ七支刀を簡単に盗める人となればかなり限られます。
それにさっき皇子が言った人、私以前見た事があって。多分お父様に付き添って見たんだと思います。
それでその人ならあり得るかなと......それとお父様から聞いた話しから、その部屋が何となく怪しいなと思いました」
もちろん、その人に会った事があると言うのは忍坂姫の嘘である。だが今はこのまま押し通すしかない。
(どうしよう、これで皇子納得してくれるかな)
忍坂姫が恐る恐る雄朝津間皇子を見た。すると彼は何やら考え込んでいた。
「確かに、物部椋垣は甥の伊莒弗を前々から妬んでいた。今は伊莒弗が物部の実権を握っているからな。さらに彼の娘が大王の妃になっている。
物部椋垣からしたら悔しくて堪らないだろう...それにさっき君が話した部屋なら確かに隠しやすい」
そう言って彼は「うーん」と唸っている。
「じゃあ、その人の家に行って、その剣が無いか確認するってのはどうでしょうか?」
忍坂姫は雄朝津間皇子にそう言った。
それを聞いた雄朝津間皇子は、まだ頬に手を当てていた。
忍坂姫から引っ叩かれたのが、相当痛かったみたいだ。
「こんな時間に、あんなふうに飛び付かれたら、普通誰だって襲って欲しいと思うに決まっているだろう」
それから彼の頬の痛みが少し和らいだのを確認して、彼女は話しだした。
「皇子に聞きたい事があるんですが。首元に大きな痣のある男性に心当たりありませんか。それと例えば部屋の外に細長い土器を置いたりとか……」
(一体この子は何を言ってるんだ?)
雄朝津間皇子はとりあえず、忍坂姫に言われた内容について考えてみた。
「えっと、首元に大きな痣がある男性で、部屋の外に細長い土器がある場所...あぁ、それなら伊莒弗の叔父にあたる物部椋垣だな。奴の部屋の前にはそんな感じの土器が確か置いてあった気がする」
(やっぱり……)
忍坂姫は、その人が今回の七支刀を盗んだ犯人かもしれないと思った。
「雄朝津間皇子、私が思うにその人が今回七支刀を盗んだ犯人なんじゃないかと思って」
皇子はいきなりそんな事を言われて唖然とした。この娘は一体何を言ってるんだと。
「一体何を根拠にそんな事を言っているんだ?」
(しまった!まさかお母様から貰った鏡にそれらしき人が映っていたとも言えないし……)
忍坂姫はその場で必死にその言い訳を考えた。
「えっと、私が思うに。今回の七支刀は意図的に盗まれた可能性があると思うんです」
「うん、それで」
彼はとりあえず忍坂姫の話しを聞いて見る事にした。
「今回の件で、恐らく物部伊莒弗はかなり重い処分を受ける事になるでしょう。そうする事で得をする人で、かつ七支刀を簡単に盗める人となればかなり限られます。
それにさっき皇子が言った人、私以前見た事があって。多分お父様に付き添って見たんだと思います。
それでその人ならあり得るかなと......それとお父様から聞いた話しから、その部屋が何となく怪しいなと思いました」
もちろん、その人に会った事があると言うのは忍坂姫の嘘である。だが今はこのまま押し通すしかない。
(どうしよう、これで皇子納得してくれるかな)
忍坂姫が恐る恐る雄朝津間皇子を見た。すると彼は何やら考え込んでいた。
「確かに、物部椋垣は甥の伊莒弗を前々から妬んでいた。今は伊莒弗が物部の実権を握っているからな。さらに彼の娘が大王の妃になっている。
物部椋垣からしたら悔しくて堪らないだろう...それにさっき君が話した部屋なら確かに隠しやすい」
そう言って彼は「うーん」と唸っている。
「じゃあ、その人の家に行って、その剣が無いか確認するってのはどうでしょうか?」
忍坂姫は雄朝津間皇子にそう言った。