こうして即位から6年目にして、去来穂別大王(いざほわけのおおきみ)は崩御した。

それから暫くして葬儀も行われ、皆大王の崩御をとても悲しんだ。

だがいつまでも悲しみに浸っている訳にはいかない。次の新たな大王を決めないといけないからだ。

現状では、大王の皇子の市辺皇子(いちのへのおうじ)はまだ6歳になったばかりである。
そして2年前に、皇子の母親である黒媛(くろひめ)も既に他界している。

そんな幼い皇子を大王にするのは無理があった。


そこで臣下達は考えて、弟の瑞歯別皇子(みずはわけのおうじ)を次の新たな大王にする事を決めた。

彼の唯一の妃である、皇女ではない佐由良を皇后にするかどうかは意見が分かれた。そこで佐由良に関しては、一旦妃のままでいる事で話しがまとまった。


「瑞歯別皇子いえ、瑞歯別大王(みずはわけのおおきみ)。この度はご決断頂き、真にありがとうございます」

臣下達は皆彼に頭を下げた。

(今のこの現状では、自分が大王になる他ない)

彼は何の抵抗もなくこの事実を受け入れた。




(出来れば、佐由良や阿佐津姫(あさつひめ)とこのまま静かに過ごしたかった。だがあの2人を守る為なら、俺は何だってやってみせる)


こうしてこの大和王権に、新たな大王が誕生した。