その時だった。別の家臣の者が大慌てで彼の元にやって来た。

瑞歯別皇子(みずはわけのおうじ)ー!!」

「うん、一体慌ててどうした」

家臣の男は「ぜーはーぜーはー」と呼吸を整えてから言った。

「たった今大王の従者の者から連絡が入りました。
今日の朝方から大王の体調が急に悪化し、その後大王が崩御されました」

「何だって大王が!お前、それは本当か!!」

瑞歯別皇子は余り事に一瞬で顔を青ざめた。そして彼はその家臣に詰め寄り、家臣を揺さぶった。

(そ、そんな事があるはずない。大王……兄上がまさか!!)

家臣もそんな状態の瑞歯別皇子を見て、涙が出そうなの必死で堪えて言った。

「ほ、本当でございます」

それを一緒に聞いた、佐由良や稚田彦(わかたひこ)も言葉を失った。

「な、何で大王が……」

瑞歯別皇子は俯いて手を強く握りしめた。
そして、彼の目からは一筋の涙が落ちた。

「皇子……」

佐由良は皇子の肩にそっと手を当てた。

「佐由良、済まない。予定よりも帰りが遅くなるかもしれん」

「はい、分かってます。阿佐津姫(あさつひめ)とここで待ってます」


その後瑞歯別皇子は、稚田彦と他数名を引き連れて大王の宮へと向かった。