そして躬市日は、椋毘登に刀で飛びかかりに行く。幸い彼の後ろが入り口だ。彼の動き方からして、彼はそのまま部屋の外に出ようとしているようだ。
だがそんな躬市日の行動は、椋毘登にはお見通しだった。彼は躬市日の刀を自身の刀で受け止めると、前に少しずつ前進していく。どうやら彼を外に逃がさないようにしたいのだろう。
「く、くそ!」
躬市日もこれでは前に出られないと思い、仕方なく、一旦後ろに下がった。
その頃厩戸皇子は、稚沙の元に駆け寄り、彼女の縄をほどいてくれていた。
「厩戸皇子、有り難うございます!」
「椋毘登から、自分が躬市日を引き付けている間に、稚沙を助けて欲しいといわれてね。でも君が無事で本当に良かったよ」
そんな様子に躬市日も気が付いたようで、彼はさらに焦りを感じる。こうなってしまえば、椋毘登との直接対決をするほかない。
「くそ、仕方ない。ここはもうお前を倒すしかない。だがやはりお前も蘇我の人間だな。結局は権力にすがり付くのか……」
「ふん、俺は別に権力なんかどうでも良い。俺はただ自分の大切な人達を守り、そしてお前達のような犠牲者をもう出したくはなかった。そのためには、蘇我の権力を維持するのが都合が良いと思っただけだ」
そして椋毘登は再び躬市日に向かっていった。
その頃稚沙は、厩戸皇子と一緒にただただそんな椋毘登達を見ていた。
「椋毘登が、蘇我一族の繁栄に執着するのは、もう無駄な争いをしたくないから?」
「きっとそうなのだろう。あの躬市日って青年は、どうやら物部守屋の息子らしい。だが椋毘登は、彼は既に亡くなっていると思っていたみたいだ」
「え、物部守屋の息子?」
「それと、これは私の推測だが。彼と椋毘登は元々友人のような間柄ではなかったのではないかと」
(ちょっと待って、それならどうして椋毘登は躬市日に刀を向けるの?)
だが今の2人は戦いの真っ最中である。ひとまず稚沙と厩戸皇子は、彼らの戦いを見守ることにした。
「椋毘登、どうしてだ。どうしてお前はここまでしようとするんだ?糠手姫皇女は無事なのだろう?」
躬市日は、何故彼がこの件にここまで関わるのか、まるで理解出来ない。これはあくまで大和側の問題である。
だがそれを聞いた椋毘登は、一瞬動きを止めた。
「何でって……それはお前が俺の大事な人を傷付けようとしたからだろう!」
「なに、大事な人だと?」
その瞬間、躬市日は厩戸皇子のとなりにいる稚沙を見る。それで彼は、椋毘登の怒りの原因をどうやら悟ったようだ。
「なるほど、椋毘登そういうことか」
そして尚も2人は激しく刀をぶつけ合う。だが戦いが長引けば、いずれ誰かがこの部屋にやってくるだろう。椋毘登は人がやってくる前に、この戦いにけりをつけたかった。
(やはり、ここは覚悟を決めるしかない……)
「躬市日、お前は俺にとって大事な友達だった。だが糠手姫皇女の誘拐未遂ともなれば、ただでは済まされない。それなら俺自身の手で決着をつけてやる」
彼はそういって、それまでよりもさらに早い動きで、躬市日に向かっていった。
だがそんな躬市日の行動は、椋毘登にはお見通しだった。彼は躬市日の刀を自身の刀で受け止めると、前に少しずつ前進していく。どうやら彼を外に逃がさないようにしたいのだろう。
「く、くそ!」
躬市日もこれでは前に出られないと思い、仕方なく、一旦後ろに下がった。
その頃厩戸皇子は、稚沙の元に駆け寄り、彼女の縄をほどいてくれていた。
「厩戸皇子、有り難うございます!」
「椋毘登から、自分が躬市日を引き付けている間に、稚沙を助けて欲しいといわれてね。でも君が無事で本当に良かったよ」
そんな様子に躬市日も気が付いたようで、彼はさらに焦りを感じる。こうなってしまえば、椋毘登との直接対決をするほかない。
「くそ、仕方ない。ここはもうお前を倒すしかない。だがやはりお前も蘇我の人間だな。結局は権力にすがり付くのか……」
「ふん、俺は別に権力なんかどうでも良い。俺はただ自分の大切な人達を守り、そしてお前達のような犠牲者をもう出したくはなかった。そのためには、蘇我の権力を維持するのが都合が良いと思っただけだ」
そして椋毘登は再び躬市日に向かっていった。
その頃稚沙は、厩戸皇子と一緒にただただそんな椋毘登達を見ていた。
「椋毘登が、蘇我一族の繁栄に執着するのは、もう無駄な争いをしたくないから?」
「きっとそうなのだろう。あの躬市日って青年は、どうやら物部守屋の息子らしい。だが椋毘登は、彼は既に亡くなっていると思っていたみたいだ」
「え、物部守屋の息子?」
「それと、これは私の推測だが。彼と椋毘登は元々友人のような間柄ではなかったのではないかと」
(ちょっと待って、それならどうして椋毘登は躬市日に刀を向けるの?)
だが今の2人は戦いの真っ最中である。ひとまず稚沙と厩戸皇子は、彼らの戦いを見守ることにした。
「椋毘登、どうしてだ。どうしてお前はここまでしようとするんだ?糠手姫皇女は無事なのだろう?」
躬市日は、何故彼がこの件にここまで関わるのか、まるで理解出来ない。これはあくまで大和側の問題である。
だがそれを聞いた椋毘登は、一瞬動きを止めた。
「何でって……それはお前が俺の大事な人を傷付けようとしたからだろう!」
「なに、大事な人だと?」
その瞬間、躬市日は厩戸皇子のとなりにいる稚沙を見る。それで彼は、椋毘登の怒りの原因をどうやら悟ったようだ。
「なるほど、椋毘登そういうことか」
そして尚も2人は激しく刀をぶつけ合う。だが戦いが長引けば、いずれ誰かがこの部屋にやってくるだろう。椋毘登は人がやってくる前に、この戦いにけりをつけたかった。
(やはり、ここは覚悟を決めるしかない……)
「躬市日、お前は俺にとって大事な友達だった。だが糠手姫皇女の誘拐未遂ともなれば、ただでは済まされない。それなら俺自身の手で決着をつけてやる」
彼はそういって、それまでよりもさらに早い動きで、躬市日に向かっていった。