「ただ俺も、あの時は皆殺しにされたと聞いてました。だがもしかすると手違いで、その子供だけ生き延びていたのであれば」
(躬市日、お前はあの時死んでなかったというのか、ならどうして……)
「でも、それと糠手姫皇女の誘拐は繋がりがあるようには思えない。なのでその青年が、今回は偶々関わっていただけのような気もする」
厩戸皇子は、椋毘登やその場にいる人達にそう話す。物部の生き残りが糠手姫皇女を誘拐したところで、恐らく何の意味もないだろう。
「確かに厩戸皇子のいう通りだ。きっとその青年は何らかの理由で、糠手姫皇女の誘拐に加担したのだろう」
蘇我馬子も彼に同調してそう話す。彼からしてみれば、恨みの元は自分達蘇我だ。皇女の誘拐などで、蘇我が特別痛手を受けることもないだろう。
「ところで椋毘登、その躬市日って青年が隠れていそうな場所に心当たりはないのか?」
椋毘登は蘇我馬子にいわれて、ふと考えてみる。
稚沙が誘拐されてから、まだ1日も経っていない。なので意外にこの近くに、躬市日達がまだ潜んでいる可能性もあった。だが実際に彼らのいる場所など、椋毘登には全く検討がつかない。
(くそ、何かないのか……)
「ただちょっと不思議なんだが、何故やつらは糠手姫皇女を誘拐したんだ?最近の彼女の場合だと、押坂彦人大兄皇子との婚姻の問題ぐらいだろ?」
蝦夷はそんな椋毘登の様子を見て、殴られて傷む鼻を押さえながらいった。
(確かに蝦夷のいう通りだ。糠手姫皇女がいて困るやつらといったら……)
椋毘登がふと脳裏に考えを巡らせている時である。
「それは、推坂彦人大兄皇子の2人の妃達ではないのですか?」
突然、また別の青年の声がした。どうやらこの部屋にまた誰かが入ってきたようである。
「なんだ、妹子か。お前までやってきていたのか」
その場に現れたのは、何とあの小野妹子だった。
「はい、彼女らは元々推坂彦人大兄皇子と糠手姫皇女の婚姻をひどく嫌がってると聞いてましたので。それと私が今日小墾田宮にくる際に、その2人の皇女が何故か、この近くにある宮に向かっている話を偶然聞きました」
「まぁ、皇女が行ける場所など限られるからな」
厩戸皇子はそういうと、それまで口を閉ざしていた炊屋姫に目を向ける。
すると他の人達も同様にし、息を呑んで彼女の言葉を待った。
「ふぅー、分かりました。妃の2人は私の娘です。なので私が何とか吐かせましょう」
とりあえず2人の皇女の元に行けば、そこに稚沙がいるかもしれない。もしいなかったとしても、無理やり居場所を吐かせるまでである。
それで一旦はこの場をお開きにしようかと思ったその矢先。椋毘登が慌てて炊屋姫の前に出ていき、彼女にいった。
「炊屋姫、躬市日のしたことはどのみちもう許されない。なら、彼の始末は俺にさせて貰えないでしょうか?」
椋毘登はこの問題について、自身でけりをつけたいと思っているようである。
「まぁ、どのみち今回の件に関しては、刀の腕のたつあなたに協力して貰えるなら、こちらとしても願ったりです。馬子、彼がそういってますが、どう思いますか?」
炊屋姫はそういって、蘇我馬子に目を向ける。
だがこの状況からして、さすがに彼もこれは同意するほかないと考えた。
「はい、分かりました。その青年の始末は椋毘登に任せます」
「炊屋姫、叔父上、有り難うございます!」
(待っていろ、稚沙。お前は絶対に俺が助け出してやる……)
椋毘登は断固たる決意を持って、彼女を救うことを決めた。
だが、そんな彼の姿を糠手姫皇女が呆然と眺めていた。彼女からしても、椋毘登の真剣さがとてもひしひしと伝わってきているようだ。
(躬市日、お前はあの時死んでなかったというのか、ならどうして……)
「でも、それと糠手姫皇女の誘拐は繋がりがあるようには思えない。なのでその青年が、今回は偶々関わっていただけのような気もする」
厩戸皇子は、椋毘登やその場にいる人達にそう話す。物部の生き残りが糠手姫皇女を誘拐したところで、恐らく何の意味もないだろう。
「確かに厩戸皇子のいう通りだ。きっとその青年は何らかの理由で、糠手姫皇女の誘拐に加担したのだろう」
蘇我馬子も彼に同調してそう話す。彼からしてみれば、恨みの元は自分達蘇我だ。皇女の誘拐などで、蘇我が特別痛手を受けることもないだろう。
「ところで椋毘登、その躬市日って青年が隠れていそうな場所に心当たりはないのか?」
椋毘登は蘇我馬子にいわれて、ふと考えてみる。
稚沙が誘拐されてから、まだ1日も経っていない。なので意外にこの近くに、躬市日達がまだ潜んでいる可能性もあった。だが実際に彼らのいる場所など、椋毘登には全く検討がつかない。
(くそ、何かないのか……)
「ただちょっと不思議なんだが、何故やつらは糠手姫皇女を誘拐したんだ?最近の彼女の場合だと、押坂彦人大兄皇子との婚姻の問題ぐらいだろ?」
蝦夷はそんな椋毘登の様子を見て、殴られて傷む鼻を押さえながらいった。
(確かに蝦夷のいう通りだ。糠手姫皇女がいて困るやつらといったら……)
椋毘登がふと脳裏に考えを巡らせている時である。
「それは、推坂彦人大兄皇子の2人の妃達ではないのですか?」
突然、また別の青年の声がした。どうやらこの部屋にまた誰かが入ってきたようである。
「なんだ、妹子か。お前までやってきていたのか」
その場に現れたのは、何とあの小野妹子だった。
「はい、彼女らは元々推坂彦人大兄皇子と糠手姫皇女の婚姻をひどく嫌がってると聞いてましたので。それと私が今日小墾田宮にくる際に、その2人の皇女が何故か、この近くにある宮に向かっている話を偶然聞きました」
「まぁ、皇女が行ける場所など限られるからな」
厩戸皇子はそういうと、それまで口を閉ざしていた炊屋姫に目を向ける。
すると他の人達も同様にし、息を呑んで彼女の言葉を待った。
「ふぅー、分かりました。妃の2人は私の娘です。なので私が何とか吐かせましょう」
とりあえず2人の皇女の元に行けば、そこに稚沙がいるかもしれない。もしいなかったとしても、無理やり居場所を吐かせるまでである。
それで一旦はこの場をお開きにしようかと思ったその矢先。椋毘登が慌てて炊屋姫の前に出ていき、彼女にいった。
「炊屋姫、躬市日のしたことはどのみちもう許されない。なら、彼の始末は俺にさせて貰えないでしょうか?」
椋毘登はこの問題について、自身でけりをつけたいと思っているようである。
「まぁ、どのみち今回の件に関しては、刀の腕のたつあなたに協力して貰えるなら、こちらとしても願ったりです。馬子、彼がそういってますが、どう思いますか?」
炊屋姫はそういって、蘇我馬子に目を向ける。
だがこの状況からして、さすがに彼もこれは同意するほかないと考えた。
「はい、分かりました。その青年の始末は椋毘登に任せます」
「炊屋姫、叔父上、有り難うございます!」
(待っていろ、稚沙。お前は絶対に俺が助け出してやる……)
椋毘登は断固たる決意を持って、彼女を救うことを決めた。
だが、そんな彼の姿を糠手姫皇女が呆然と眺めていた。彼女からしても、椋毘登の真剣さがとてもひしひしと伝わってきているようだ。