こうして、いよいよ今日の準備が整えられていった。

 ここに集った諸王(しょおう)や他の諸臣(しょしん)の者達は、炊屋姫(かしきやひめ)の登場を今か今かと心を静かにして待っていた。

 そしてついに、炊屋姫が皆の前に現れる。


「皆、今日はこの誓願(せいがん)の為に、はるばる集まってもらい、本当に感謝しています。

 私の父である波流岐広庭大王(おしはるきひろにわのおおきみ)の時代に我が国に仏教が伝わり、この国も大きく変わり始めました……

 そしてその仏教をめぐっては、悲しい争いも経験することになりました。

 ですがこれは、神仏の思し召しの他ならないのです」


 炊屋姫は一言一言、ゆっくりと言葉を選んで語っていく。

 今この国は、仏教という新しい教えが必要なのだと。

 そして仏の教えを通して、この国とそこに住む人々の幸せを願って彼女は自身の想いを皆に語っていった。

「そこで、皆にお願いしたいことがあります。

 この神仏の教えを広めるため、各自が銅および縫の丈六の仏像を、一躯ずつ造ることを誓おうではないか。

 これが私達の神仏への誓いの証として……」


 それを聞いていた者達も、炊屋姫の言葉にとても感銘を受ける。

 これからこの国は大王を中心とし、神仏を敬う国作りを目指す事になるのだろう。


 そして炊屋姫はさらに続けて、皆にいった。

「また仏像を作る工として、鞍作止利(くらつくりのとり)に命じることにしました。今後は彼を中心に、しっかりと取り組むように……鞍作止利も良いですね」

「はい、炊屋姫。仰せのままにいたします」

 その言葉を聞いた鞍作止利も、彼女に深々と頭を下げてそう答える。



 こうしてここに集った者達は、皆それぞれが仏像の制作に取りかかることを、心に誓ったのだった。