その頃、大和の2人の皇女が何やらヒソヒソと会話をしていた。
「とりあえず、糠手姫皇女さえいなくなればそれで良いわ」
「本当にそうよ。采女の娘の分際で推坂彦人大兄皇子に取りいるなんて、いい気味だわ」
そういって2人は、互いにクスクスと笑いだした。
そんな様子を見ていた1人の青年が、その2人の皇女に声をかける。
「では、お二人方、そのようにさせて頂いて、宜しいでしょうか?」
「ええ、それで良いわ、躬市日。でもあなたも恨みとかないの?今の大和や蘇我に対して」
だが青年はひどく冷めた声で、彼女達に答える。
「別に自分の一族なんて、もうどうでも良い。それに俺は、物部には何のこだわりも持ち合わせていない」
「ふーん、そういうものなのね。じゃあ後は頼んだわよ」
皇女のうちの1人が彼に答えた。彼女らにとっては、自分達の目的さえ叶うのであれば、彼の事情などさほど気にしてないようだ。
「分かりました。では俺はこれで失礼します」
そういって躬市日と呼ばれた青年は、彼女達に一度あいさつをしたのち、その場を後にした。
「ふー、何とか話しは無事にまとまった……」
今回彼は内密に2人の皇女と会う約束をしていた。
彼女らは推坂彦人大兄皇子の2人の妃なのだが、今回の皇子と糠手姫皇女の婚姻を快く思っていなかった。
さらには推坂彦人大兄皇子自身が、この婚姻をひどく熱望していたこともあり、余計にたちが悪い。
彼女らはそのために、何とかしてこの婚姻を阻止したいと考えたのだ。
それで彼女らは誰にお願いするかで、白羽の矢を立てたのがこの躬市日という青年だった。
さらにこの依頼が成功した暁には、炊屋姫に取り入って、彼にちゃんとした身分と、将来的には位まで授けるとの条件まで入れてきた。
「しかし、女性というのは本当に恐ろしいものだ。そこまでして夫の寵愛を得たいものなのか」
彼は物部の生まれの青年だが、表だった身分は持っていない。なので時々裏でくる依頼をこなして、生計をたてていた。
「まぁ、本当に引き立ててもらえるのかは正直怪しいが、それなりの報酬も入ってくる。なのでそこまで悪い話でもない」
今も大和と蘇我が互いに、睨み合ってるような状態である。だが権力者達が互いに争い合うことで、自分達は利益を得られる。
人の欲とは何とも面白いものだ。
(あいつも今頃は、そんな環境の中に身を置いてるのだろうか……)
躬市日は一瞬、かつて親しくしていた青年の姿を浮かべる。
「まぁ俺とあいつでは、何もかもが違う。今さらどうしようもないことだな」
そういって彼は、今日はこのまま自分の仲間達の元に戻ることにした。
こうして飛鳥では、また新たな波乱が今始まろうとしていた。
「とりあえず、糠手姫皇女さえいなくなればそれで良いわ」
「本当にそうよ。采女の娘の分際で推坂彦人大兄皇子に取りいるなんて、いい気味だわ」
そういって2人は、互いにクスクスと笑いだした。
そんな様子を見ていた1人の青年が、その2人の皇女に声をかける。
「では、お二人方、そのようにさせて頂いて、宜しいでしょうか?」
「ええ、それで良いわ、躬市日。でもあなたも恨みとかないの?今の大和や蘇我に対して」
だが青年はひどく冷めた声で、彼女達に答える。
「別に自分の一族なんて、もうどうでも良い。それに俺は、物部には何のこだわりも持ち合わせていない」
「ふーん、そういうものなのね。じゃあ後は頼んだわよ」
皇女のうちの1人が彼に答えた。彼女らにとっては、自分達の目的さえ叶うのであれば、彼の事情などさほど気にしてないようだ。
「分かりました。では俺はこれで失礼します」
そういって躬市日と呼ばれた青年は、彼女達に一度あいさつをしたのち、その場を後にした。
「ふー、何とか話しは無事にまとまった……」
今回彼は内密に2人の皇女と会う約束をしていた。
彼女らは推坂彦人大兄皇子の2人の妃なのだが、今回の皇子と糠手姫皇女の婚姻を快く思っていなかった。
さらには推坂彦人大兄皇子自身が、この婚姻をひどく熱望していたこともあり、余計にたちが悪い。
彼女らはそのために、何とかしてこの婚姻を阻止したいと考えたのだ。
それで彼女らは誰にお願いするかで、白羽の矢を立てたのがこの躬市日という青年だった。
さらにこの依頼が成功した暁には、炊屋姫に取り入って、彼にちゃんとした身分と、将来的には位まで授けるとの条件まで入れてきた。
「しかし、女性というのは本当に恐ろしいものだ。そこまでして夫の寵愛を得たいものなのか」
彼は物部の生まれの青年だが、表だった身分は持っていない。なので時々裏でくる依頼をこなして、生計をたてていた。
「まぁ、本当に引き立ててもらえるのかは正直怪しいが、それなりの報酬も入ってくる。なのでそこまで悪い話でもない」
今も大和と蘇我が互いに、睨み合ってるような状態である。だが権力者達が互いに争い合うことで、自分達は利益を得られる。
人の欲とは何とも面白いものだ。
(あいつも今頃は、そんな環境の中に身を置いてるのだろうか……)
躬市日は一瞬、かつて親しくしていた青年の姿を浮かべる。
「まぁ俺とあいつでは、何もかもが違う。今さらどうしようもないことだな」
そういって彼は、今日はこのまま自分の仲間達の元に戻ることにした。
こうして飛鳥では、また新たな波乱が今始まろうとしていた。