2人が庁にやって来ると、椋毘登の行きたかった場所まで稚沙が案内した。その為、彼の用事も思いのほか早く終わらせることが出来たようである。
「ふぅー、稚沙のおかげで早く頼まれごとを済ませられた。本当に助かったよ」
「まぁ、ただ案内するだけだったから、そんな大したことじゃないけどね」
それから椋毘登は、小墾田宮での用事が済んだようで、そのまま蘇我に帰るとのことだった。
だがそんな時である。少し離れた所に炊屋姫がいるのが見えた。そして彼女の隣には糠手姫皇女もいる。
(あ、炊屋姫様達だわ。どうやら話が終わったのかしら)
糠手姫皇女が炊屋姫に何かいっているようで、そして話が終わったのか、とそのまま何故か自分達の方に走ってやってくる。
すると椋毘登の方が、先に彼女に対して反応を見せた。
「え、あれは糠手姫皇女?何故彼女がここに……」
(え、椋毘登は、糠手姫皇女を知ってるの?)
稚沙が、そんな彼の反応を見ていた時である。糠手姫皇女は2人の前にくるなり、こともあろうに、いきなり椋毘登に飛び付いた。
「椋毘登、会いたかった!」
「糠手姫皇女、いきなり何なんですか?こんな場所では困ります」
椋毘登はそういって、彼女を自身からそっと引き離した。
だが彼女は、それでも彼の側から離れる気は全く無いようで、必死で彼の腕をつかんでいる。
「最近、あなたが小墾田宮に良く出入りしているとも聞いていたから、もしかしたら会えるかもとも思っていたの」
糠手姫皇女は椋毘登を目の前にして、とても嬉しそうな表情を見せる。
「でも、あなたは皇女ですよ。もっとご自身の立場を考えて下さい。それに確か、最近婚姻が決まったとも聞いてます」
椋毘登は少しやれやれといった感じのようだ。だが相手が皇女ということもあって、余りぞんざいには出来ないようである。
しかしそんな2人の光景を、稚沙は呆然と眺めていた。
(これは、一体どういうこと?)
この感じだと、前々からこの2人は知り合いのようだ。
「私、推坂彦人大兄皇子との婚姻を取り止めにしたくて、今日炊屋姫の元に相談にきていたの」
「はぁ?婚姻の取り止め!」
「だって、そうでしょう。私が好きなのは椋毘登あなたなのよ?もういい加減、椋毘登も覚悟を決めてちょうだいよ!」
そこへ炊屋姫もやってきて、本当にどうしたものかと頭を抱えている。
稚沙の方もこの光景を見て、彼女の想い人が誰なのか分かってしまった。
(つまり、糠手姫皇女の好きな相手は椋毘登ってこと?)
「糠手姫皇女、分かって下さい。今回の婚姻は、推坂彦人大兄皇子たっての希望です。皇子はあなたをそれほどご自身の妃にしたいと思われてるのですよ?」
「そ、それは分かってるけど……」
すると椋毘登は彼女に対して、少し厳しめな声で告げた。
「分かっているのなら、あなたも皇女としての立場をもっと考えてみて下さい。それに俺は皇子ではなく、単なる豪族の者です。あなたを娶るなんてこと、そうそう出来るものではない」
「ふぅー、稚沙のおかげで早く頼まれごとを済ませられた。本当に助かったよ」
「まぁ、ただ案内するだけだったから、そんな大したことじゃないけどね」
それから椋毘登は、小墾田宮での用事が済んだようで、そのまま蘇我に帰るとのことだった。
だがそんな時である。少し離れた所に炊屋姫がいるのが見えた。そして彼女の隣には糠手姫皇女もいる。
(あ、炊屋姫様達だわ。どうやら話が終わったのかしら)
糠手姫皇女が炊屋姫に何かいっているようで、そして話が終わったのか、とそのまま何故か自分達の方に走ってやってくる。
すると椋毘登の方が、先に彼女に対して反応を見せた。
「え、あれは糠手姫皇女?何故彼女がここに……」
(え、椋毘登は、糠手姫皇女を知ってるの?)
稚沙が、そんな彼の反応を見ていた時である。糠手姫皇女は2人の前にくるなり、こともあろうに、いきなり椋毘登に飛び付いた。
「椋毘登、会いたかった!」
「糠手姫皇女、いきなり何なんですか?こんな場所では困ります」
椋毘登はそういって、彼女を自身からそっと引き離した。
だが彼女は、それでも彼の側から離れる気は全く無いようで、必死で彼の腕をつかんでいる。
「最近、あなたが小墾田宮に良く出入りしているとも聞いていたから、もしかしたら会えるかもとも思っていたの」
糠手姫皇女は椋毘登を目の前にして、とても嬉しそうな表情を見せる。
「でも、あなたは皇女ですよ。もっとご自身の立場を考えて下さい。それに確か、最近婚姻が決まったとも聞いてます」
椋毘登は少しやれやれといった感じのようだ。だが相手が皇女ということもあって、余りぞんざいには出来ないようである。
しかしそんな2人の光景を、稚沙は呆然と眺めていた。
(これは、一体どういうこと?)
この感じだと、前々からこの2人は知り合いのようだ。
「私、推坂彦人大兄皇子との婚姻を取り止めにしたくて、今日炊屋姫の元に相談にきていたの」
「はぁ?婚姻の取り止め!」
「だって、そうでしょう。私が好きなのは椋毘登あなたなのよ?もういい加減、椋毘登も覚悟を決めてちょうだいよ!」
そこへ炊屋姫もやってきて、本当にどうしたものかと頭を抱えている。
稚沙の方もこの光景を見て、彼女の想い人が誰なのか分かってしまった。
(つまり、糠手姫皇女の好きな相手は椋毘登ってこと?)
「糠手姫皇女、分かって下さい。今回の婚姻は、推坂彦人大兄皇子たっての希望です。皇子はあなたをそれほどご自身の妃にしたいと思われてるのですよ?」
「そ、それは分かってるけど……」
すると椋毘登は彼女に対して、少し厳しめな声で告げた。
「分かっているのなら、あなたも皇女としての立場をもっと考えてみて下さい。それに俺は皇子ではなく、単なる豪族の者です。あなたを娶るなんてこと、そうそう出来るものではない」