翌日の朝になり、2人のいる小屋にも朝日の光が入ってきていた。そんな中、椋毘登(くらひと)がその朝の光でふと目を覚ます。

「う、う~ん、なんだもう朝か」

 彼は上半身だけ体を起こすと、その場で大きく背伸びをした。どうやら昨日の熱もすっかり引いたようで、体の怠さもなくなっている。

「とりあえず、熱はおさまったようだな。これなら今日は動けそうだ」

 そんな椋毘登がふと横に目をやると、彼のとなりでは稚沙(ちさ)が、スヤスヤと寝ていた。

「今回は稚沙のおかけで、どうにか難をしのげたみたいだな……」

 椋毘登はふと稚沙の頬にかかっていた髪を横にずらしてやる。何とも無防備な寝顔だなと彼は思った。

「まぁ、昨日は仕方がなかったとはいえ、こいつもよくもまあ、男の横で平気で寝れるよな。俺が熱で動けなかったから良いものを……」

 椋毘登は自分でそういって、思わずクスッと笑ってしまった。今自分は、とんでもない発言をしたのではないかと。

(まぁ本人は聞いてないから、大丈夫か)

 だがそんな時である。ふと稚沙の目がパチッと開く。どうやら彼女も椋毘登の声で目が覚めたようだ。

「あれ、もう朝なの?」

 稚沙は少しあくびをしながら、椋毘登同様に上半身を起こした。

 そして2人は思わず互いに目を合わす。

「椋毘登お早うー、熱はもう大丈夫なの?」

 そういって彼女は、彼のおでこに思わず手を当ててきた。

「良かった。どうやら熱は引いたみたいね」

 稚沙はとても嬉しそうにしながら彼にそう話す。今の彼女は椋毘登と違い、何とも無邪気な様子だ。

 椋毘登は、そんな稚沙が自身の額から手を離したのち、少し気恥ずかしそうにして、彼女にいった。

「あぁ、どうもそのようだ。今回は本当に迷惑をかけてしまった。でもお前のおかげで本当に助かったよ」

 それを聞いた稚沙も思わず彼にいった。

「椋毘登のそういう表情って、何か見てて凄く可愛い感じがする」

 そして彼女は少しクスクスと笑って見せる。

 だが椋毘登も昨日の件がある手前、今回は彼女に中々いい返しにくい。

(まぁ、今回だけは多めにみるか……)

 それに彼女がこんなに自分に対して、看病してくれたことも、照れくささはある反面、何故か不思議と嬉しい気持ちにもなった。

 そして彼女の話しによると、この家の人達が、のちほど朝食を持ってきてくれるとのこと。

 昨日椋毘登の食事で使った皿を、家の人が取りにきたそうで、その際に朝の食事の段取りも出来ていたようだ。

(本当に、何から何までこいつには頭が下がる思いがする……)

 こうして2人は朝の食事が来るのを待つことにした。