そして必死で探した甲斐もあって、稚沙は何とか無事に彼を見つけることができた。
(どうしよう。いきなりあなたが犯人かと聞いても、素直に『はい』とは中々いわないだろうし……)
そこで稚沙は、とりあえず彼の後を付けてみることにした。そもそも彼が1人で宮の中を歩いて回ること自体が怪しい。
そしてしばらく彼を追って歩いていると、本人が急に角を曲がり、姿が見えなくなってしまった。
(あ、まずい、彼を見失ってしまう!)
稚沙も慌てて彼の後を追って、その角を曲がろうとした瞬間である。
いきなり誰かに腕を捕まれ、彼女は壁に体を叩きつけられた。
そして彼女の目の前には蘇我椋毘登が立っていた。どうやら彼女を壁に叩きつけたのは、彼のようである。
「お前、一体どういうつもりだ。1度だけでなく、2度までも。前回次は無いといったよな!」
彼はとても険しい目で稚沙を見ていた。
そんな彼を見た稚沙は、必死で彼から逃れようとする。だが強い力で抑えつけられており、彼女にはどうすることも出来なかった。
(だ、駄目だ。彼から逃げれない……)
「先ほど炊屋姫様の倉庫が誰かに荒らされていたの。それでその倉庫の前を偶々あなたが歩いているのを見かけたわ。だからあなたが犯人かと思ったのよ!」
稚沙はそういい返して、思わず彼の顔を真っ直ぐ見つめる。2歳しか違わない彼に、何度も怖じ気づく自分が、少し悔しくなってきたのだ
「はぁ?倉庫が荒らされて、その犯人が俺だって!」
それを聞いた椋毘登はとても驚いたのか、思わず彼女の腕を握っている手を緩めた。
すると稚沙は彼の手を振り払った。
「そうよ。あなたなら、そんなことをしても、平然とした顔でその後外を歩けるでしょう」
稚沙はまだ少し彼に怯えながらも、何とかいい返した。
それを聞いた椋毘登は、余りのことに思わず頭に手をあてる。そしてその場で彼はひどく深いため息を漏らした。
「あのな、いっとくけど俺はその荒らしの犯人じゃない。今日は叔父上の代理で小墾田宮に来ていた。それで今後はここに来ることも多くなるから、宮の中を見て回りたいと炊屋姫にも伝えていたよ」
「へぇ?」
稚沙は椋毘登のその話を聞いて、思わず拍子抜けしてしまう。もしこれが本当のことなら、彼が犯人というのは完全な彼女の勘違いだ。
(ど、どうしよう。前回のこともあるし、今回は流石にただではすまないかも……)
一方椋毘登の方は、ただただ呆れて彼女を見ている。彼女の予想外の発言に、彼はもう怒る気にもなれないようだ。
「ほ、本当にごめんなさい!あなたには前回の件もあるのに、何と謝れば良いのか……」
稚沙は何とか許して貰おうと、彼に必死でそう謝った。
「はぁー、誤解が解けたんなら別にもう良い」
椋毘登はそんな稚沙の様子を見て、すっかり脱力してしまっていた。
「それと一応いっておくと、炊屋姫の倉庫らしき物なら俺も見かけた。だが、その周辺で特に怪しい人影は見かけなかった」
「そ、そうなの。じゃあ犯人は一体誰なのかしら?」
椋毘登が犯人ではなく、また怪しい人物もいないとなると、一体誰が犯人なのだろうか。そしてその人物は何の目的で、このようなことをしたのか。
「それなら、俺をその倉庫に連れていってくれないか?今回の荒らし事件が気になるし、少し状況を見ていきたい。お前が一緒なら俺が倉庫に行っても怪しく思われないだろう?」
「え、あなたが?」
彼がこの事件に興味を持つのは少し意外に思えた。だがこの状況では、彼女も彼に嫌とは中々いいにくい。
「わ、分かったわ。それであなたが納得するなら」
こうして稚沙と椋毘登は、先ほどの倉庫に戻ることにした。
(どうしよう。いきなりあなたが犯人かと聞いても、素直に『はい』とは中々いわないだろうし……)
そこで稚沙は、とりあえず彼の後を付けてみることにした。そもそも彼が1人で宮の中を歩いて回ること自体が怪しい。
そしてしばらく彼を追って歩いていると、本人が急に角を曲がり、姿が見えなくなってしまった。
(あ、まずい、彼を見失ってしまう!)
稚沙も慌てて彼の後を追って、その角を曲がろうとした瞬間である。
いきなり誰かに腕を捕まれ、彼女は壁に体を叩きつけられた。
そして彼女の目の前には蘇我椋毘登が立っていた。どうやら彼女を壁に叩きつけたのは、彼のようである。
「お前、一体どういうつもりだ。1度だけでなく、2度までも。前回次は無いといったよな!」
彼はとても険しい目で稚沙を見ていた。
そんな彼を見た稚沙は、必死で彼から逃れようとする。だが強い力で抑えつけられており、彼女にはどうすることも出来なかった。
(だ、駄目だ。彼から逃げれない……)
「先ほど炊屋姫様の倉庫が誰かに荒らされていたの。それでその倉庫の前を偶々あなたが歩いているのを見かけたわ。だからあなたが犯人かと思ったのよ!」
稚沙はそういい返して、思わず彼の顔を真っ直ぐ見つめる。2歳しか違わない彼に、何度も怖じ気づく自分が、少し悔しくなってきたのだ
「はぁ?倉庫が荒らされて、その犯人が俺だって!」
それを聞いた椋毘登はとても驚いたのか、思わず彼女の腕を握っている手を緩めた。
すると稚沙は彼の手を振り払った。
「そうよ。あなたなら、そんなことをしても、平然とした顔でその後外を歩けるでしょう」
稚沙はまだ少し彼に怯えながらも、何とかいい返した。
それを聞いた椋毘登は、余りのことに思わず頭に手をあてる。そしてその場で彼はひどく深いため息を漏らした。
「あのな、いっとくけど俺はその荒らしの犯人じゃない。今日は叔父上の代理で小墾田宮に来ていた。それで今後はここに来ることも多くなるから、宮の中を見て回りたいと炊屋姫にも伝えていたよ」
「へぇ?」
稚沙は椋毘登のその話を聞いて、思わず拍子抜けしてしまう。もしこれが本当のことなら、彼が犯人というのは完全な彼女の勘違いだ。
(ど、どうしよう。前回のこともあるし、今回は流石にただではすまないかも……)
一方椋毘登の方は、ただただ呆れて彼女を見ている。彼女の予想外の発言に、彼はもう怒る気にもなれないようだ。
「ほ、本当にごめんなさい!あなたには前回の件もあるのに、何と謝れば良いのか……」
稚沙は何とか許して貰おうと、彼に必死でそう謝った。
「はぁー、誤解が解けたんなら別にもう良い」
椋毘登はそんな稚沙の様子を見て、すっかり脱力してしまっていた。
「それと一応いっておくと、炊屋姫の倉庫らしき物なら俺も見かけた。だが、その周辺で特に怪しい人影は見かけなかった」
「そ、そうなの。じゃあ犯人は一体誰なのかしら?」
椋毘登が犯人ではなく、また怪しい人物もいないとなると、一体誰が犯人なのだろうか。そしてその人物は何の目的で、このようなことをしたのか。
「それなら、俺をその倉庫に連れていってくれないか?今回の荒らし事件が気になるし、少し状況を見ていきたい。お前が一緒なら俺が倉庫に行っても怪しく思われないだろう?」
「え、あなたが?」
彼がこの事件に興味を持つのは少し意外に思えた。だがこの状況では、彼女も彼に嫌とは中々いいにくい。
「わ、分かったわ。それであなたが納得するなら」
こうして稚沙と椋毘登は、先ほどの倉庫に戻ることにした。