伯母である公子の夫は建設会社の社長を務め、いわば彼女は社長夫人の座に収まっている。裕福な家庭で咲耶と同い年の娘、佐知子がいたが、公子と佐知子は親子であからさまに咲耶を見下し、つらく当たった。
公子は咲耶以前に咲耶の母、咲良が嫌いだったのだ。
咲耶の両親は、父の身内の反対を押し切って結婚した。今の咲耶と同じで母には身寄りがなく、代々続く由緒ある家柄だと自負する此花家の跡取りであった咲耶の父との結婚を最後まで反対したのは公子だった。
しかしなんとか周囲を説得し、ふたりは結婚。仲睦まじい家庭を築き、娘も生まれた。徐々に反対していた両親も咲良の存在を認めていった。それが公子としては気に食わない。
また、親戚がいつも集まるたびに手放しで咲良と咲耶の容姿を褒め、気が利く優しい性格をもてはやしたのも腹立たしかった。
咲良はサラサラの黒髪とぱっちりとした二重瞼、色白でどこか儚げな印象を抱かせる正統派の美人だった。それはしっかりと娘である咲耶に受け継がれている。
佐知子としては、同い年で美人な咲耶が妬ましかった。
そして弟である咲耶の父が事故で亡くなったとき、公子にとって咲良と咲耶は決定的に憎むべき相手となった。八つ当たりと言っても過言ではない。
そのあと母を亡くした咲耶をどうするかという話になり、親戚からの勧めと世間体だけで咲耶を引き取った。両親を亡くし途方に暮れている咲耶を多くの人々が心配するのさえ気に食わず、唯一、此花家の本家の血筋でその名を継いでいるのさえ腹が立った。
自身の弟より咲良の面影をより濃く残している咲耶を大事にできるわけがない。その感情は佐知子にも受け継がれ、母娘で妙な結束力も合わさり咲耶に対する扱いはひどくなる一方だった。ついにこの離れに追いやられるほどには。
咲耶としては、伯母一家は家族でもなんでもない。出かけるときはひとり置いていかれ、食卓も共に囲んだ記憶もない。いつも最低限のものしか与えられず、優秀な咲耶は高校も特待生制度を使って進学した。
わりと上流階級の裕福層の子どもたちが通う学校で、場違いなのは理解していたが、ひたすら勉学に励んだ。そうやって慎ましく過ごしていると、それなりに友人もできてくる。咲耶の容姿から告白されることもあった。
しかし同じ学校に通う佐知子が咲耶の根も葉もない噂を拡散し、咲耶から友人や異性を遠ざけた。佐知子の嘘に気づいている者もいたが片や建設会社の社長令嬢、片や特待生制度を利用した身寄りのない娘となると周りの態度は決まっていた。
高校は大学に進学するために通う。経験を得て勉強に励むのだけを目的に咲耶は孤独な高校生活を送った。
公子は咲耶以前に咲耶の母、咲良が嫌いだったのだ。
咲耶の両親は、父の身内の反対を押し切って結婚した。今の咲耶と同じで母には身寄りがなく、代々続く由緒ある家柄だと自負する此花家の跡取りであった咲耶の父との結婚を最後まで反対したのは公子だった。
しかしなんとか周囲を説得し、ふたりは結婚。仲睦まじい家庭を築き、娘も生まれた。徐々に反対していた両親も咲良の存在を認めていった。それが公子としては気に食わない。
また、親戚がいつも集まるたびに手放しで咲良と咲耶の容姿を褒め、気が利く優しい性格をもてはやしたのも腹立たしかった。
咲良はサラサラの黒髪とぱっちりとした二重瞼、色白でどこか儚げな印象を抱かせる正統派の美人だった。それはしっかりと娘である咲耶に受け継がれている。
佐知子としては、同い年で美人な咲耶が妬ましかった。
そして弟である咲耶の父が事故で亡くなったとき、公子にとって咲良と咲耶は決定的に憎むべき相手となった。八つ当たりと言っても過言ではない。
そのあと母を亡くした咲耶をどうするかという話になり、親戚からの勧めと世間体だけで咲耶を引き取った。両親を亡くし途方に暮れている咲耶を多くの人々が心配するのさえ気に食わず、唯一、此花家の本家の血筋でその名を継いでいるのさえ腹が立った。
自身の弟より咲良の面影をより濃く残している咲耶を大事にできるわけがない。その感情は佐知子にも受け継がれ、母娘で妙な結束力も合わさり咲耶に対する扱いはひどくなる一方だった。ついにこの離れに追いやられるほどには。
咲耶としては、伯母一家は家族でもなんでもない。出かけるときはひとり置いていかれ、食卓も共に囲んだ記憶もない。いつも最低限のものしか与えられず、優秀な咲耶は高校も特待生制度を使って進学した。
わりと上流階級の裕福層の子どもたちが通う学校で、場違いなのは理解していたが、ひたすら勉学に励んだ。そうやって慎ましく過ごしていると、それなりに友人もできてくる。咲耶の容姿から告白されることもあった。
しかし同じ学校に通う佐知子が咲耶の根も葉もない噂を拡散し、咲耶から友人や異性を遠ざけた。佐知子の嘘に気づいている者もいたが片や建設会社の社長令嬢、片や特待生制度を利用した身寄りのない娘となると周りの態度は決まっていた。
高校は大学に進学するために通う。経験を得て勉強に励むのだけを目的に咲耶は孤独な高校生活を送った。