『捨て猫は、処分される運命なんだよ』

受話器の向こうで、鼻を鳴らす音が聞こえる。

ーーーー運命……。

そんなもの信じてもないし、そんなもので人の生き死にが決まってるなんてクソくらえだ。

「お前が、決めることじゃない」

『いずれ、あの猫は、お前を裏切るよ』

「それならそれで構わない……それよりも、随分と派手にやったもんだな』

最大限の嫌味を込めて発した言葉は、少しは伝わるだろうか。

『花灯、お前のせいだろ。公園の池に死体が一体あがったよ』

「俺じゃないし、《《どうせ自殺》》だろ」

『お前が言うな、元はといえば誰のせいだよ』

「それはこっちの台詞だな」

今朝、朝早く、別件で二体の遺体が発見されている筈だ。俺が、向かった時には、すでに息絶えていた。

『バレてんだ?』

茶化した様な声に混ざって、少し遠くから、初めて聞く女の声が聞こえる。

『蓮野さーん。ちょっと見てもらっていいですか?で、これって、痴情のもつれによる心中ってことですか?』

ハキハキとした口調で、よく通る高めの声だ。まだ若い。

『それでは、またご連絡いたしますので』

不意に、千夏は敬語でそう、答えると一方的に電話を切った。