私は答えない。
守れないと思った約束には頷かない。

「今まで僕たちはあと1ヶ月、あと3日だねって会話してたけど」
「うん」
「僕はこう続けていきたいんだ。あとマイナス1日だね、マイナス12日だとか」
「うん」
「そして来年の今日、こういうんだ。おめでとう。余命マイナス365日だねって」

マイナス365日。
自然界では存在しない数字。
私達だけの秘密のカウント。
なんて素敵な響きだろう。
カレンダーを捲る日が、きっとまた楽しくなる日が訪れるのだろう。彼の素晴らしいマイナスの余命日の提案は。

「一緒に、マイナス1日を迎えよう」

本当に?
そんなことができるのだろうか。

「できたらいいね」
「ああ、きっと……できるんだ」

そう言って、私たちはまた、触れるだけのキスをした。
それから、私の意識はぷつりと切れて……。


間もなく、運命の日を迎える。