「ところで、由吉さん。愛美ちゃんの部屋を訪れたってことは何か用事があったんですか?」
「あー! そうそう! そうだよ久瑠実さん! 忘れるところだった」
大声をあげて、由吉さんは一度リビングから退出したかと思うと、すぐに戻ってきて自慢げにこう言ったのだ。
「家族写真を撮ろう!」
そう宣言した由吉さんの手には、カメラが握られていた。
それもデジカメとかじゃなく、本格的な一眼レフのカメラだ。あまり機械には詳しくないわたしだけれど、これもまた車と同じでお高いやつだと思う。
「今日は愛美ちゃんが来てくれた記念日だからさ。ちゃんと写真に残したくって」
「おっ、パパにしてはいい考えだねー」
由吉さんの発言に興味を示した憂ちゃんが、そんな声を上げる。
「あら、それじゃ私もおしゃれしなくちゃいけないかしら?」
「何いってんのさ、久瑠実さんは今のままで十分綺麗だよ」
「もう、由吉さんったら。みんながいる前でそんなこと言わないで下さい。照れるじゃありませんか」
先ほどまで怒っていたはずの久瑠実さんが、頬をピンク色に染めて照れていた。
見た目がまだ幼さを残している久瑠実さんなので、照れている姿は、女の私から見てもちょっと可愛いな、なんて思ってしまった。
「父さんも母さんも、そういうのはあまり子供の前で見せないでほしいんだけどね」
「蓮お兄ちゃんの言うとおりだよ。見てるこっちが恥ずかしい」
そんなことを言う2人だったけど、わたしには、蓮さんも憂ちゃんも、自分のお父さんとお母さんを誇らしく見ているような気がした。
それをわたしは、羨ましいなんて絶対に思わないけれど。