「あの、わたし、気にしていませんから。その、由吉さんを、許してあげて下さい」

 そうだ、こんなことになってしまったのもわたしが原因なのだ。

 無警戒に服を脱いでしまったこともそうだが、数分前に久瑠実さんが忠告していたにも関わらず、わたしはドアノブに預かったメッセージカードをかけることを忘れてしまっていたのだ。

 原因はわたしにもあるわけで、由吉さんだけが悪いわけじゃない。


 そうだ。


 どんなことがあっても、大抵のことはわたしが全部悪いのだ。


「うっ、ううー……。愛美ちゃん、君は僕を許してくれるのかい?」

 許すもなにも、はじめから怒ってないんですけど……。

 そんな言葉が頭の中に浮かび上がったけれど、口には出さずにわたしは黙ってこくんっ、と首を縦に動かした。

「おおっ、愛美ちゃん! 君はなんていい子なんだ!」

「パパッ! 調子に乗らないっ!」

 正座の姿勢から勢いよく立ち上がってわたしに抱きつこうとした由吉さんを、華麗な右足正面蹴りで撃退する憂ちゃん。

 うわー、痛そう……。

「愛美ちゃん。パパの扱いは、大体こんな感じでいいからね」

 こんな感じって言われてしまったが、絶対に真似はしないでおこうと心に誓った。

「ううっ、なかなか鋭い蹴りをするようになったじゃないか……。もう父さんから憂に教えることはなにもない……」

「いや、そもそも何も教わってないから」

 そんな親子のやりとりを聞いて、本を読んでいた蓮さんが少し笑ったように見えた。

「もうー。愛美ちゃんが許してくれたからいいですけど、本当に気をつけて下さいね、由吉さん。愛美ちゃんは思春期の女の子なんですから」

 呆れながらも、さっきまで放っていた不穏なオーラを収めた久瑠実さんが、由吉さんに問いかける。