そして、わたしたちが辿りついた場所は、街から少し離れた公民館で、智子はここの図書館に行きたいということだった。
「先に言っとくけど、休日まで勉強するなんて嫌だからね」
「さすがにわたしもそこまではしないよ。今日は純粋に、本を読みたいの。それなら、愛美ちゃんも時間、潰せるでしょ?」
たしかに、2人で会話をしなくても過ごせるとなれば、好都合かもしれない。
ほら、図書館って静かにしなきゃいけないし、基本、携帯機器は電源OFFっていうのがマナーだしね。近江家グループの通知が溜まっていくことに辟易することもない。
というわけで、わたしたちは館内に入って、図書館で読書に勤しむことにした。
館内は、いつものわたしたちのように、参考書を広げている学生もいれば、机いっぱいに英字で書かれた本を広げて、なにやらノートに写している初老の男性もいた。
みんな自分のやることに夢中で、わたしたちが入ってきても、誰も気に掛ける様子もなく、それがわたしには心地よかった。
智子は探している本があるということなので、一度わたしたちは別行動をすることになった。
わたしは、適当にお薦めの本として陳列されていたものを物色する。
本というのは、その人の特徴や特質がわかると云われている。
それは著者だけじゃなくて、読者も同じだ。
部屋に置いてある本棚を見れば、その人がどういう人なのか、だいたい理解できる。
だからこそ、わたしは少し気になってしまった。
智子は、どんな本を探して、ここに来たのだろうか?