幸い、まだ夏服ではなかった為傷口を制服の袖で隠すことができた。
『リストカットをした』なんて、親にもバレるワケにはいかない。もちろん、クラスの人にも絶対バレちゃダメいけない。バレたらいじめが更にひどくなる。
この日早く帰ってきていた私をお母さんは不思議がっていた為、『お腹痛くて早退した』と嘘をついた。
今日はこれで誤魔化せることができたけど、多分次からもう誤魔化すことはできない。
***
翌日もいつものように『起きなさい!』と怒られる。
行きたくない、行きたくない、行きたくない。
学校に行きたくない。
布団から出ることなく蹲っていると、お母さんが部屋へとやってきた。部屋のドアを乱暴に開け、
「いつまで寝てるの! 起きなさいって言ってるでしょ!」
布団から出れないでいる私を怒鳴る。
「……行きたくない。お腹痛い……」
「腹痛の薬あるから、それ飲みなさい!学校は休んじゃダメだからね」
……学校行きたくないの。分かってよ。
歯を食いしばり、
「学校ツライ、楽しくない」
と言いたくなかった言葉を口にした。
私の最初で最後のSOSのつもりだった。けれど、『何言ってるの。アンタが楽しむ努力をしてないからでしょ』冷たく言い放つお母さんに何も言えなかった。
私の声はお母さんには届かなかった。