痛いのかな。
　痛いのはイヤだな……


　そっとカッターを手に取り、刃を出す。左手に持ち替え、右手は拳を作り痛みが我慢できる体制を作る。


　最初はそっと。薄い皮が切れるくらいにしよう。

　それでも怖くてつい、歯を食いしばる。


　ゆっくりゆっくり腕へ持っていき、ススッと線を引く。


　痛い……だけど、今日の出来事を思い出すと全然我慢できる痛みだった。


　もう一度、今度はグッと指先に力を入れて線を引く。


「痛ッッ！！」


　ヒリヒリと切っている所が痛む。切り終えた後は血がじんわりと滲んできた。そこで切ってしまったという罪悪感が襲ってきた。


　悪いことをしてるのは分かってる。
　けれど、こうしなきゃ気持ちが整理できない。切ってる瞬間の痛みと切り終えた後の痛みで、『生きている』ということを再認識した感覚だった。


　――死にたくない。生きていたい。


　――自殺した子が何でリストカットをしたか分かった気がした。


　誰かに助けてほしかったんだ……