顔も髪もビシャビシャに濡れてしまっていたため、クラスに戻る気力もなく、しばらくトイレにいた私は授業中の間にトイレから抜け出し校舎を出た。


 『残って』と書いてあった手紙のことなんて、頭から抜け落ちていた。


「……消えたい」


 ――消えてしまいたい。私が死ぬまでいじめが続くのなら、いっそのこといなくなりたい。


 それだけを考え家に帰宅する。


 パートに行っているお母さんはまだ家にはいない時間帯だ。台所に行き包丁を手に取る。包丁を腹部に向けてみた。けれど、いざ自分を刺そうとするとやっぱりできなくて。


 恐怖でヘタヘタとその場に座り込んだ。


 ……怖い。


 消えたいと思っていたのに、死ぬ勇気すらない。


 どうせ、私なんていてもいなくても同じなのに……


 包丁を元の位置に戻し、自室へと向かう。
 何も考えずにただひたすら机の引き出しを開けていると、一本のカッターナイフが目に入った。


 この間ニュースになっていた自殺した子のことを思い出した。


 腕には『多数のリストカットの傷』があったんだった。自殺したいと思ってる子が選んだ最初の逃げ道だったのかもしれない。



 腕を切れば、少しは気が楽になるんだろうか。