「高野はどうするの?」

 「どうしようかね」

 「このままうかうかしてちゃあ、すぐ夏休みだよ。それが明けりゃあ、先生たちは鬼の形相で、進路の決断を迫ってくる。なんとか答えを出しても、勉強勉強、情報収集に勉強に情報収集って呪文みたいに、こっちの気配を感じる度に言ってくる」

 「怖いこと言わないでよ」と、おれは肩をすくめて両腕をさすった。

 「もう、勉強なんてやめて留年しようかな」

 「最悪だよ」と押村さんが笑う。

 「それなら、留学ってことにして学校休んで、漫画を読み漁る方がよっぽど賢い」

 「それは嘘だ」とおれは笑い返す。「絶対嘘」と。

 「漫画は人生の教科書だぞ」

 「そういうことじゃなくて」

 「漫画は素晴らしいぞ? 学校の教科書を全部漫画に置き換えるべきだとすら考えている」

 「それは改めよう」

 「駄作と言われるものから傑作と言われるものまで、授業の時間は漫画を読むんだ」

 「考え直して」

 「そうして、登場人物の失敗から、成功から、世の中の酸いも甘いも学ぶの」

 「もーしもーし」

 「そして、あまりに成功ばかりで失敗も絶望も味わわない妬ましい登場人物を、皆で湧き上がる嫉妬のまま、ぼろくそに貶す」

 「醜いよ」

 「それで満足しなければ、焼き払っ――」

 「だめだめ、絶対だめ。もう、いろんなものを犯してるから」

 「どう思う、こんな学校?」

 「どうかと思うよ。もうなんの話かわかんなくなってるし」

 「会話というのはこうして広がっていくものなのだよ」

 「まじでなんの話だ……」

 押村さんはふうーと息をついた。

 「迷子だねえ、私たち」

 「どっちかって言うと話題が……」

 「やりたいことを探すって、難しいよね」

 見てみれば、青園が妙に穏やかな表情をしていた。それを確認すると同時に、押村さんに対して震えるような思いも芽生えた。この人はすごい人なのかもしれないと。二人の距離が、まるで溶け合うように近くあるように感じたのだ。

 ふと、この間青園がいた辺りへ目をやると、一人の男子がそこから校舎の中へ走っていくのが見えた。