怖い怖いと言って半べそさえ掻きそうな高野をなんとか落ち着かせ、食事を始めた。互いのごはんの上に梅干しと煎りごまが載っている奇跡を見つけた。
私は玉子焼きをかじった。
「さっきの話さ、あれ、逆かもね」
「逆?」
「そう。男の人が別人なんじゃなくて、女の人が別人っていう」
「ええ……嫌だって、怖いって」
「で、実の主人公はその幼馴染の男の人っていう、そこも含めての、大どんでん返し」
「ええ……。ちょっ、女の人はどこいったの?」
私は水筒の蓋を開け、中身を一口飲んだ。
「それか、その女の人との日々は、そもそも、その男の人の中にしか存在しないとか」
「なに、夢オチみたいなこと?」
「二重人格とか」
「え、その男の人は、自分の中にできた女性の人格と恋をしてたってこと?」
「ありえなくはないかもよ?」
「なんか悲しいなあ、それは……」
「でも、題名で花衣って言ってるんだから、結婚はできそうだよね」
私はもう一口水筒の中身を飲んで、蓋を閉めた。
「最後はくっつくんじゃないかなあ。花吹雪の中、華やかな服に身を包んで式を挙げる、みたいな。ダブルミーニング的な」
「じゃあさっきの線はない、と?」
「うーん……。それも自分の中でやっちゃうとか……? てかそれって、女性目線と男性目線に分かれて進んでるの?」
「うん、そんな感じだよ。彼とか彼女とかって書いてあるけど」
「三人称なんだね。どうなんだろう、やっぱり二人とも存在してるのかなあ」
「二重人格も存在はしてると思うけどね」
「まあ、そうなんだけどさ。ちゃんと、一人と一人って感じなのかなって」
「うーん……」
「個人的には、さっき言った愛憎劇ルートも嫌いじゃないけどね」
「ええ、おれは嫌だなあ。せっかくじゃ今の穏やかさ、爽やかさを持ったまま結末を迎えてほしい」
「それもいいよね。てか、読者としてはそれが一番だよね。登場人物にはみんな幸せになってほしい」
「よかった、押村さんが普通の心を取り戻してくれて」
安心したように言う高野へ、私は「そもそもなくしてないからね」と突っ込んだ。「誤解しないでよ、さっきの予想はミステリー好きが高じてのだから」と重ねる。
私は玉子焼きをかじった。
「さっきの話さ、あれ、逆かもね」
「逆?」
「そう。男の人が別人なんじゃなくて、女の人が別人っていう」
「ええ……嫌だって、怖いって」
「で、実の主人公はその幼馴染の男の人っていう、そこも含めての、大どんでん返し」
「ええ……。ちょっ、女の人はどこいったの?」
私は水筒の蓋を開け、中身を一口飲んだ。
「それか、その女の人との日々は、そもそも、その男の人の中にしか存在しないとか」
「なに、夢オチみたいなこと?」
「二重人格とか」
「え、その男の人は、自分の中にできた女性の人格と恋をしてたってこと?」
「ありえなくはないかもよ?」
「なんか悲しいなあ、それは……」
「でも、題名で花衣って言ってるんだから、結婚はできそうだよね」
私はもう一口水筒の中身を飲んで、蓋を閉めた。
「最後はくっつくんじゃないかなあ。花吹雪の中、華やかな服に身を包んで式を挙げる、みたいな。ダブルミーニング的な」
「じゃあさっきの線はない、と?」
「うーん……。それも自分の中でやっちゃうとか……? てかそれって、女性目線と男性目線に分かれて進んでるの?」
「うん、そんな感じだよ。彼とか彼女とかって書いてあるけど」
「三人称なんだね。どうなんだろう、やっぱり二人とも存在してるのかなあ」
「二重人格も存在はしてると思うけどね」
「まあ、そうなんだけどさ。ちゃんと、一人と一人って感じなのかなって」
「うーん……」
「個人的には、さっき言った愛憎劇ルートも嫌いじゃないけどね」
「ええ、おれは嫌だなあ。せっかくじゃ今の穏やかさ、爽やかさを持ったまま結末を迎えてほしい」
「それもいいよね。てか、読者としてはそれが一番だよね。登場人物にはみんな幸せになってほしい」
「よかった、押村さんが普通の心を取り戻してくれて」
安心したように言う高野へ、私は「そもそもなくしてないからね」と突っ込んだ。「誤解しないでよ、さっきの予想はミステリー好きが高じてのだから」と重ねる。