「その歌詞、いいよね」
どうしようもなく今の自分と重ねてしまうんだ。
「僕たち学生って進路を決める一番大事な時期にいるじゃん? だけどまだ進路のことなんて僕たちには分からない。まだ子どもだし……でも、自分にとって未来が明るい道を選びたい、そのためなら何度失敗したっていい。そんなふうに感じるんだ」
もちろん僕には、そんな未来を望むことは許されない。
だからこそ、不可能な未来に期待してしまいたくなる。
「僕たちの未来が明るいといいね」
「うん、そうだね」
ーーせめて100%のうちの1%だけでも。
〝光〟があれば頑張れる気がするんだ。
この曲を聴いていると、後ろ向きな思いが前向きに変わる。勇気づけられる。
開いていた窓からふわりと風が入り込んで白いカーテンを揺らす。
暑くもなく寒くもないちょうど良い風が吹いて、秋の匂いが鼻先をかすめる。
好きなアーティストの曲で盛り上がって、彼女の新たな一面を見ることができて、僕は大満足だ。
「ねえ、どうしてハル笑ってるの?」
「絶対内緒!」
緩みっぱなしの頬は、制御不能でどうやら僕の言うことを聞いてはくれないらしい。