外国人のような自然なアッシュ系の髪は光に透けて白くなり、太陽の光を映した瞳は琥珀色に輝いている。
 そう、まるで、芳賀先生の作品のような透明感に溢れていた。
 本当に美しいものは、触れたら消えてしまうのだと、美術部の先生がいつか言っていた。
 まさに今の景色は、その通りだと感じた。
 こんな心境もすべて彼には読まれているはずだけれど、彼は眉をぴくりとも動かさない。
『窓、少し閉めたほうがいいね』
 私は照れ隠しでそう胸の中でつぶやき、窓を閉めた。
 見惚れてばかりいないで集中しよう。こんな感情これ以上読まれたら恥ずかしいもの。
 ガリガリと鉛筆がザラついた紙面を走る音だけが響き、しばし沈黙が続いたが、急に成瀬が口を開いた。
「お前……、友達とかいるんだな、この前校門で見た」
『あ、桐のことかな……。小学生の頃からの唯一の友達で、その子がここのアトリエを貸してくれたの』
「志倉が声出た時からの友達なの?」
『え……』
「ていうか、いつから声出ないんだっけ?」
 その質問に、私は一瞬固まる。
 声が出なくなったのは、私が小学五年生の頃からだ。
 思い出そうと記憶をたどると、あるひとつの言葉だけが浮かんでくる。
『お前なんでそんなに本心と違うことばっか言ってるわけ?』
 自分の中の、一番触れてほしくない、ど真ん中を突き刺されてしまったあの言葉が、いまだに喉元に痞えている。
 その言葉を言い放ったのは、クラスでもあまり目立たない、私と同じように地味な男の子――名前は岸野明人(きしのあきひと)君だった。
 彼のことを恨んでいるわけではないけれど、どうしても、あの言葉を思い出すたびに足がすくんでしまうのだ。
 明らかに表情を強張らせている私を見て、成瀬君はそれ以上何も聞いてこなかった。
 けれど、私の脳内では、ずるずると芋づる形式で昔の記憶が蘇ってしまった。



 ダメもとで受けた私立の小学校に受かってしまったことには、私も親も驚いていた。
 当時の私は、もうすっかり近くの小学校に通うつもりでいたため、そこでのんびり過ごすつもりでいたのだ。
 予想していなかった合格通知に両親は慌てふためき、嬉しい気持ちより驚きや焦りが勝っているようだった。