一瞬、強い日差しが入り込んだような気がした。

 谷地(やち)小豆(あずき)は視線を上げ、窓側を見る。しかしそこは空席で、机が照らされているだけだ。

「どうした」

 喫茶店『tear』の店主である結月(ゆづき)(るい)は、完成したカフェモカを置きながら言う。

「もう一年経ったんだなって思っただけ」

 小豆はそれを木製のお盆に乗せ、客のもとに運ぶ。

「まだ引きずってるのか?」

戻ってきた小豆に、躊躇いながら聞く。

「ううん、るー君とか(そら)さんに話聞いてもらったりしたから、今は平気」

 そう語る表情は優しく、嘘をついているようには見えない。それにつられるように、涙の表情も柔らかくなる。

「そうか」

 小豆はまた窓際の席を見つめ、そこに座っていた大学の先輩、椿木(つばき)優夜(ゆうや)のことを思い返す。

 あれは、一年前の春のことだった。