「今日の日直はプリントを集めてきてくれ」


国語の授業が終わったあと、先生にそう言われ心の中で私は盛大にため息をついたが、分かりました、と返事をすると、先生は教室を出た。


「七海、今日日直とか災難だねー」
「大丈夫? 一緒行こうか」


教卓の前でプリント回収をしていると、友人たちが、ほらみんなも早くー、と声をかけて手伝ってくれる。
ふつうに仲良かったらここで断るのは、間違っているのだと思うけれど、学校生活を全て誰かと行動し続けるのは私にとって少し息苦しいもの以外の何者でもない。
でも、二人は私のためを思って言ってくれているのだと分かった。そんな好意を無下にはできなかったが。


「ううん、大丈夫だよ。ありがとうね」


ほとんどのプリントが集まると、私はそれを掴んでトントンッと整えると、じゃあ教室で待ってるね、と私に手を振って自分たちの机に戻って行った二人。
すぐさま雑誌かなんかを取り出して、楽しそうにおしゃべりを始めた。

私は、それを教卓の前で羨んだあと、小さく唇を噛むと、後ろ髪引かれる思いで教室をあとにする。
自分が大丈夫だよって断ったはずなのに、なんで羨んだりするの。
ずっと誰かと一緒に行動していると、ずっと"いい子"でいなければならない私。
息が詰まる、息が苦しくて、頭がボーッとして足元がぐらつく。

だから、私は自ら一人になることを選択した。
休み時間のほんのわずかの時間。
それくらい一人になるなんてなんてことない。
私はべつにほんとの意味で孤独じゃない。

大丈夫、大丈夫。
心の中で呪文のように繰り返した。

きゅっと、プリントを抱きしめると、国語の準備室へと駆けた。