部屋は思ったよりも狭かった。四隅に置かれた燭台が、中央に鎮座する檻を浮かび上がらせている。
 その中に、恭しく膝をついたヴィンスが頭を垂れていた。

「お買い上げいただき誠にありがとうございます。多目的用途の人狼でございます」

 淡々とした声だ。しかしその底に燃える屈辱が、イヴの鼓膜を焼いた。

「……やめてよ、ヴィンス」

 震える声を絞り出す。ヴィンスが目を見開いた。イヴはヴェールを引きむしり、仮面を取り払った。
 からん、と乾いた音を鳴らして仮面が床に落ちる。ヴェールが羽のように宙を舞った。

「──イヴ」