しかし両親を失ったときとはまた違う苦しみのうねりにイヴは拳を握りしめた。爪が手のひらを食い破り血を滲ませる。痛みは感じなかった。
 両親の死は理不尽だった。けれど、イヴの手の及ぶ事象ではなかった。二人は王宮に招かれた帰りに強盗に襲われて亡くなった。イヴがあのときどれほど足掻いても二人の死を避けることはできなかった。