「あなたにもらった人狼、遊び過ぎて死んでしまったのよ。楽しかったわあ……どんな遊びにも歯を食いしばって耐え忍んで。爪を剥いでも首を絞めても、悲鳴一つあげないの。それで少し強く鞭打ったら、動かなくなってしまったわ」

 話しているうちに、夫人の瞳が恍惚に蕩けていく。連れてこられた人狼がガタガタと震え出した。
 イヴの顔から感情が抜け落ちる。ぞっとするほど青ざめたかんばせに、目だけが炯々と光っていた。風の一吹きで破裂しそうな、危うい落ち着きを保っていた。

「……それで、遺体はどうしたんです」
「とっくに燃やしたわ。灰は川に撒いたんじゃなかったかしら。だから、代わりの人狼をお譲りしようと思ったのだけど、いかが?」

 お茶菓子でも振る舞うかのような気軽さで、夫人は笑む。イヴはすらりと立ち上がった。

「いいえ、結構」

 帰りの挨拶も何もなく、そのまま大股で出口へ向かう。人狼とすれ違うとき、ほんの少しだけ歩みを緩めたが、それでも彼女は足を止めなかった。